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生産性向上とは?業務効率化との違いや成功に導く施策・方法を紹介

生産性向上

「生産性向上」という言葉を企業で働く多くの方がよく耳にしていることでしょう。何となく意味を把握している方も、具体的に生産性向上について説明ができたり、似たような意味を持つ「業務効率化」との違いを語れたりする方は少ないかもしれません。

本記事では生産性向上と業務効率化との違い、生産性向上を成功に導く施策や方法を紹介しますので、生産性向上について一度に詳しくなれます。

自社の生産性向上策について、考えながら読み進めてみましょう。

生産性向上とは

生産性とは、企業が行った投資(インプット)に対して成果(アウトプット)を測る指標です。少ない投資から多くの生産物を生み出している状態が、生産性が高いという状態です。

この生産性を高めていくことが生産性を向上させるということになります。

計算式で表すと「成果(アウトプット)÷企業の投資(インプット)=生産性」です。インプットを低く抑えて、アウトプットを大きく生み出すことができれば、生産性の値が大きくなります。

生産性の種類

生産性向上とは、新たな設備投資や業務改善策などのインプットを行うことにより、成果などのアウトプットが増すことをいいますが、この生産性の算出には、計算式の項の部分を変えることにより、いくつかの算出方法がありますので紹介します。

資本生産性

資本生産性とは、株主や債権者が出資したお金(インプット)をもとに、どれだけ利益(アウトプット)を生み出しているかを測定する指標です。つまり、投入したお金にクローズアップする生産性の算出方法といえます。

計算式は「営業利益÷投下資本=資本生産性(%)」です。全ての業種において、この資本生産性の中央値は6.8%といわれています。

労働生産性

労働生産性は「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」の2種類に分けられます。

付加価値とは、生産額や売り上げから、原材料費や外注費などを引いた粗利のことです。

この付加価値をアウトプットと捉え、それらを生み出すために投入した労働力をインプットとして計算します。

付加価値労働生産性の計算式は「付加価値額÷労働量(労働者数や労働時間)」です。

「物的労働生産性」は、労働者数と労働時間をインプット、インプットしたことで生み出した生産量をアウトプットと捉えます。物的労働生産性は、目に見えるものを測る指標です。

物的労働生産性は「生産量÷労働量(労働者数や労働時間)」で算出できます。

全要素生産性(TFP)

全要素生産性は、英語で「Total Factor Productivity」と呼び、TFPと略語で呼ばれることもあります。全要素生産性とは、文字通り、労働や設備の導入、原材料の投入など全ての要素を考慮した生産性指標です。

全要素生産性の計算式は「生産量÷全要素投入量」で表します。労働生産性の中でも、技術革新よる生産性を測る指標です。

業務効率化との違い

生産性向上と業務効率化は、しばしば混同されがちですが、厳密にはこの2つは異なる意味を持っています。それは、新たな価値を生みだすかどうかという点です。

生産性向上が重視しているのは「成果」なのに対し、業務効率化は時間や費用のコストを下げるなど「改善」に向けた取り組みのことを指します。

業務効率化とは、従来の成果を低コストで出せるように業務のなかの「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省く取り組みです。

時間的・経済的なコストを削減することが目的のため、新たな価値をつくることまでには及びません。業務効率化は、労働投入量(従業員数と労働時間数)の効率化につながる「生産性向上を図るため手段の一つ」と認識しておくといいでしょう。 

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生産性向上が重要視される理由

生産性向上は、利益を追求する企業においては必須課題ともいえますが、近年は大きく3つの理由から、社会的にも求められています。日本社会が抱える特有の問題がその理由です。

労働力人口の減少

1つ目は少子高齢化による労働力人口の減少です。

日本の人口は2006年の1億2,774万人がピークで、現在は減少の段階にシフトしました。15歳から64歳の生産年齢人口は、これまでも2011年から2021年の10年間で、横ばいから少しずつ減少傾向にあったのです。

内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると2050年には2021年から29.2%マイナスの5,275万人になると見込まれています。

これから30年もたたないうちに生産年齢人口が30%も減少するのですから、多くの企業で人材不足が深刻化することは明白といえるでしょう。こうした理由から、競争力を維持するためには生産性向上を図り、同じ時間でより多くの生産ができる仕組みづくりをする必要があるのです。

国際競争力の低下

少子高齢化などにより国内市場が縮小していく中で、海外進出を果たす企業も増えていくでしょう。グローバル市場で勝ち残るためには、生産性向上を図り、限られた資源で価値の高い商品・サービスを生み出し続けていく必要があります。

公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2022」によると、2021年の日本の1人当たりの労働生産性は81,510ドル(818万円)で、OECD加盟38カ国中29位です。主要先進7カ国の中では、1970年以降は最下位が続いています。

今後、日本社会を発展させていくためには生産性の向上が不可欠といえるでしょう。

従業員の意識変化

政府が企業に対して促進している「働き方改革」によって、ワークライフバランスが実現可能な労働環境を従業員が求めるようになってきました。

生産性向上に対する取り組みが進まない企業では従業員の負担は重くなる一方です。この状況から脱却しなければ、いずれは人材の確保も困難になってくるでしょう。

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生産性向上のメリット

企業が生産性向上に取り組めば、さまざまなメリットを得られます。代表的なメリットを3つ紹介しますので、自社で受けられるメリットを具体的に思い描いてみましょう。

コスト削減

1つ目のメリットは、残業代や固定費、原材料費などのコスト削減です。

生産性向上に取り組むことで、時間や工程の効率化を図り、人件費などの圧縮が可能となります。コスト削減ができれば、その分の労働時間を新商品の開発や既存製品の付加価値向上のための業務に当てることができるでしょう。

競争力の向上

2つ目のメリットは、競争力の向上です。

日本の労働生産性は、海外の先進国の中でも低いため、グローバル市場で生き抜くためには、競争力の向上が重要です。生産性向上を図り、競争力を付けることが喫緊の課題といえるでしょう。

生産性向上に取り組めば、国際競争力だけではなく、国内の同業他社に差をつけられますし、経営を持続可能なものにできるはずです。

ワークライフバランスの改善

生産性向上に取り組んで従業員の残業時間が減れば、従業員のワークライフバランスにつながることも大きなメリットです。

仕事と家庭の両立がうまくできれば、従業員のモチベーションが向上し、業務効率がアップし、生産性向上も実現するという好循環をもたらすでしょう。

働きやすい職場環境は、現在、在籍している従業員の長期雇用が可能となるだけでなく、離職率が低いという点で企業イメージが良くなることで優秀な人材の確保がしやすくなるというメリットも享受できる可能性が高まります。

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生産性向上を成功に導く施策・方法

企業が生産性向上のために取り組むためにできることはたくさんありますが、多くの企業が実践する具体的な施策を5つ挙げます。

自社の状況をイメージしながら、どのような施策がマッチするのか検討してみましょう。

「ムリ」「ムダ」「ムラ」な業務の洗い出し

生産性向上の目標を掲げたら、すぐに取り組みたいのは既存の業務の棚卸しです。現在、自社内で行われている業務の量や業務フローを、正確に把握しましょう。

「『ムリ』『ムダ』『ムラ』はないか」という視点から、社内で慣習的に続けられてきた手作業による重要度の低い業務などがあれば、改善を図ります。

この際、生産性向上の担当者だけでなく、該当部門の従業員の声も聞くことができれば、想定をしていなかったような「ムリ」「ムダ」「ムラ」な業務を発見できるかもしれません。

業務の標準化

業務の棚卸しをし、改善する業務を洗い出したら、業務の標準化も行いましょう。

従業員の誰が業務を担当しても、同じ品質を維持できる状態をつくっておくことが、継続的に業務効率の向上に取り組むことにつながるからです。

業務がマニュアル化されていないことで生産物の品質にばらつきが生じてしまい、品質を修正するために時間を割いてはいませんか。マニュアルなどにより業務の標準化を図ることで、そうした業務のミスを未然に防ぐことができます。

人員配置とアウトソーシング

生産性向上には適材適所に人材を配置することも大切です。業務効率を図るための策がとられたとしても、業務に求めるスキルや適性を備えた人材が配置されていなければ、業務効率は当然、低下してしまいます。

もちろん、スキルや適性だけでなく、人員配置を考える際は従業員の希望や性格も加味し、配属先の状況に合わせる配慮が必要です。

配属先に業務の習熟度が低く、スキルも未熟な人員が集いすぎてしまうと、上長の負担が重くなり、業務効率向上にはつながらなくなってしまうからです。

また、業務をアウトソーシングできないかという視点も持ってみましょう。自社内だけで既存業務の人員配置を検討すると、行き詰まる可能性があるからです。業務をアウトソーシングすることで、従業員は主要業務にかける時間を増やせる可能性もあります。

ITツールの活用

業務効率向上にすぐにつながる可能性があるのはITツールの活用です。棚卸しを行った自社業務の中で、定型的で日常的に行う業務はITツールで置き換えられないか検討してみましょう。

ITツールであれば、従業員の勤務時間外でも稼働でき、人件費を削減して業務効率を大幅にアップさせることも可能です。

従業員の共感を得る

企業が生産性向上に取り組み始めても、従業員の気持ちがついてこなければ、どれほどいい業務効率化策であっても、予想した結果は得づらいでしょう。

従業員が企業の方針に置いてきぼりにならないように、自社の目指す方向性をしっかり伝え、共感を抱いてもらえるような施策を実施することが大切です。

具体的には、社内コミュニケーションを活性化させて自社の方向性をほかの従業員と確認・共有する機会をつくることや、自律的に働ける環境を整備することなど、さまざまな方法があります。

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生産性向上の失敗につながる注意点

生産性向上で得られるメリットは大きいですが、生産性向上の取り組み自体が失敗することもあれば、取り組んだことにより状況を悪化させてしまう危険性もあります。

生産性向上の失敗につながる注意点を確認してみましょう。

トップダウンで施策を行う

現場の状況を把握しないまま、トップダウンで生産性向上に取り組むのは要注意です。

実績が出せないばかりではなく、現場の従業員が疲弊してしまいます。可能なものから徐々に、生産性を高める取り組みを進めていきましょう。

長時間労働で解決する

従業員数を抑えた状態で、労働時間を増やすことで、見た目の生産性向上を達成しようとするのは危険です。短期的に生産性向上は実現できるかもしれませんが、従業員には過労死というリスクも生じます。

2019年4月から時間外労働に上限が設けられていますので、以下の資料で学んでおきましょう。

厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針」

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生産性向上に活用できる助成金制度

生産性向上は、単に企業経営だけではなく、日本の国際競争力にも関わる問題です。国はさまざまな助成金制度を設けて生産性向上を促していますので、そのいくつかの施策を紹介します。

業務改善助成金(中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金)

生産性向上に資する設備投資などに活用できる「業務改善助成金」を設けています。

厚生労働省「業務改善助成金」

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

中小企業・小規模事業者を対象にITツール導入に活用できる補助金「IT導入補助金」も検討してみましょう。

独立行政法人中小企業基盤整備機構「サービス等生産性向上IT導入支援事業」

労働生産性の向上による労働関係助成金の割増

生産性向上を実現した事業所が労働関係助成金を利用する場合に助成額もしくは助成率の割増などが行われます。

厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」

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まとめ

「J’s X」(ジェイズクロス)は、豊富な導入実績を元に企業・団体のあらゆる業務プロセスをシンプルにし、生産性向上と業務の標準化を目的としたITソリューションです。

業務効率向上を求めるなら、業界・業種に合わせた支援が可能な「J’s X」を利用して、自社にぴったり合ったシステムをストレスなく作ってみませんか。

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