BCP(事業継続計画)を耳にしたことはあるでしょうか。BCPを実施することで自然災害や感染症流行などの緊急事態が発生し機的状況におかれた場合でも、早期復旧や事業継続が可能になります。
日本では2011年の東日本大震災でBCPの重要性が再認識され、近年では自然災害に加えて新型コロナウイルスの感染拡大によって更に注目が高まりました。
BCPの意味や策定することによるメリット、策定時のポイントや注意点などを詳しく解説していきます。
BCP(事業継続計画)とは
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Planning)のことです。企業が自然災害や新型ウイルスのまん延、テロなどの緊急事態に陥った場合に事業資産の損害を最小限に抑えつつ、重要な業務の継続が可能な方策を用意しておくための計画を指します。
平常時からBCPを用意し有効な手を打つことで、緊急時における早期復旧や事業の継続をスムーズに進めることが可能となります。また、顧客や市場関係者からの信用向上や高い評価を受けることにもつながるでしょう。
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BCP(事業継続計画)のメリット
BCPを策定することによりさまざまなメリットがあります。詳しく説明していきます。
緊急時における対応力の向上
BCPを策定し緊急時に必要な対応を前もって把握しておくことで、事業の継続や早期復旧をできる可能性が高まります。その結果、事業縮小や倒産のリスクも軽減し、損失や顧客流出も防止できるでしょう。
企業評価の向上
業務の損害や停止は、取引先との業務にも支障をきたし企業にとってマイナスイメージを作ってしまいます。BCPを策定することで、リスクマネジメントを実践でき、社会的責任を果たせていると評価され、取引先だけではなく株主や顧客などのステークホルダーから信頼を得ることにもつながるでしょう。
社員の安心感の向上
緊急事態の対応が不十分であると、事業縮小や倒産のリスクは増大し、社員は失業してしまう危機感や不安感を抱きかねません。BCPを策定しておけば、日頃から自社のリスクマネジメントが実践されていると社員は認識し、安心感の向上につながるでしょう。
また、BCPを社内に周知させることで、社員の緊急事態に対する危機意識を高めることにもつながります。
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日本国内のBCP策定状況
2021年に帝国データバンクが行った調査によると、BCPを策定していると回答した企業の割合は全体で17.6%、企業別にみると大企業は32.0%、中小企業は14.7%と年々緩やかに上昇しています。しかし、未だ低水準で中小企業と大企業の差が縮まらないのも現状です。
令和2年に内閣府が行った調査の中では、策定理由として「リスクマネジメントの一環」とした企業が最も多く、「とても役に立った」と有用性を実感している一方で、「部署間の連携が難しい」「策定する人手を確保できない」など問題点や課題も挙がっていました。
「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の概要|内閣府
事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)|帝国データバンク
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BCP策定の方法
やみくもにBCP策定を行うのではなく、会社全体に浸透しやすい、自社の業務内容に沿ったBCP策定を実施することが重要です。ここでは、BCP策定の方法について、4つのステップに分けて具体的に説明していきます。
手順1 | BCP策定の目的を確認 | 経営理念や方針を再確認し、目的を設定する。 |
手順2 | リスクの洗い出し | 災害時などの緊急事態の発生時に事業を継続するにあたり、最優先すべき事業を洗い出し、想定されるリスクを言語化する。 |
手順3 | リスクに優先順位をつける | リスク発生頻度と損害規模を基準に優先順位を設定、BIAの活用 |
手順4 | 具体策の決定 | 誰が指揮を執るかなどの詳細部分まで決定し、緊急対応体制を構築する。 |
1. BCP策定の目的の設定
まず、企業の経営理念や企業方針を確認し、社員の人命を守るため、供給責任を果たすためなど、BCP策定の基本方針を立てることが大切です。その基本方針に沿って立てられた計画を、社員1人ひとりが把握、共有することで、適切な緊急時対応が期待できます。
また、設定した基本方針が現在の体制で実施可能かどうか見極めることも重要になるでしょう。
2. 優先すべき事業とリスクの洗い出し
緊急時に行う事業継続にあたっての最優先事業をBCPでは「中核事業」と呼びます。緊急時に全ての事業を行うことは難しく、限られたリソースを効果的に使用するためには中核事業を適切に選定することが重要です。
また、自然災害や感染症の流行、システム障害など想定されるリスクを全て洗い出すことで、具体的な対応策や課題が見つかるでしょう。
3. リスクに優先順位をつける
想定される全てのリスクに対応するのは難しく、現実的とはいえません。緊急時、限られたリソースを有効に活用できるよう、洗い出したリスクに優先順位をつけていきます。優先順位をつけるポイントは、リスクの発生する頻度と深刻度の2つです。
より精度の高いBCPを策定するため、BIA(ビジネスインパクト分析)の導入も効果的でしょう。
4. 実現可能なリスクへの対応策を具体的に決める
起こりうる全ての緊急事態に対して詳細な策定内容を定めておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。災害発生時から復旧後までの対応を、人的リソースや社内設備、資金調達、体制や社内で保有してる情報に分け、あらゆる場合のシュミレーションを実施することでより具体的なBCPの策定を行うことができるでしょう。
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BCP(事業継続計画)策定のポイント
BCPを策定しても、社内全体で周知されず活用されなければ意味がありません。まずは文書を作成し、社内全体で共有、定期的にBCP内容を確認することが重要です。
BCP策定のポイント3つを詳しく説明していきます。
参考資料を用意する
社内全体へ周知するには、誰が読んでも理解可能な文書を作成することが重要です。文書化するには、まず参考資料を準備しましょう。中小企業庁が提供する「中小企業庁BCP策定運用指針」では、BCP推進が進む欧米のノウハウを調査分析し解説された指針が示されています。
内閣府の「事業計画ガイドライン」でも、BCP策定の指針が示されている他、近年生じた災害を元に活用しやすいようにアップデートもされているため、参考にしてみるとよいでしょう。
社内全体へBCPに関する取り組みを行うことを周知・教育する
緊急事態が発生した際、速やかにBCPが発動できるよう、作成した文書を読み進めたり、社内全体へのBCP教育や訓練を実施することが大切です。
例えば、BCPに関する勉強会やディスカッションの実施、応急救護の方法や防災訓練などの実戦形式の訓練を行うことで、BCPを定着させたり防災意識を高めることも期待できるでしょう。
定期的な評価と改善
BCP運用後も、定期的な評価や必要に応じて見直しが必要です。経営環境や社会情勢の変化、中核事業に変更があった場合、これまでになかったリスクの発生なども見直すタイミングとして挙げられます。
BCP策定がゴールではありません。BCP策定後も評価や改善を繰り返し、社内BCPの精度を高めていくことが重要です。
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BCP(事業継続計画)策定の注意点
BCPの策定にはいくつか注意点があります。BCPの発動基準や発動時の体制と要員を明確にしておくこと、実現可能な計画にすることでスムーズな運用につながるでしょう。これら3つの注意点について詳しく解説します。
BCP発動基準を明確にする
BCPを策定する際、発動基準を明確にしておくことが重要です。発動基準がきちんと定まっていないと、その分発動に時間を要し損害が大きくなる可能性が高まります。
「中核事業がどのような状態になったら」「中核企業に多くの影響を与える緊急事態がどの程度の規模になったら」などBCPを発動する時期的な基準も明確にしておきましょう。
BCP発動時の体制と要員を明確にしておく
緊急時は冷静な判断が難しくなるため、責任者の強いリーダーシップが必要となります。そのため、誰がその指示を受けてどのように行動するのか、トップダウン方式で素早い行動ができるようチーム体制を事前に構築することも重要です。
また、チーム内のメンバーが事前に役割分担をしておくことで、運用に関する責任者が指揮を執りやすくなります。
実現可能な計画にする
初めから完璧なBCPを求めてしまうと、策定途中で挫折してしまったり、策定後に運用の難しさから社内で周知されず、いざ緊急事態に直面した場合に効力が発揮できない可能性もあります。自社の経営理念や方針に沿った、実現可能なBCPを策定することが重要です。
そのために、BCP策定は基本方針決定後、しっかりと手順に沿って策定するとよいでしょう。
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災害発生時の復旧までの流れ
災害発生時から復旧までの流れをイメージしておくことで、BCP策定をよりスムーズにさせ運用の効率化なども期待できます。災害発生時から復旧するまでの流れについて、3段階に分けて詳しく説明します。
災害発生から平常時への流れ | ||
①被害状況確認 | ②応酬処置(代替手段) | ③平常時の操業に戻すための復旧作業 |
・安否確認・物的被害の状況確認・システムなどの被害状況の確認 | ・人員不足や設備などの代替案の仕組みの構築・体制が整い次第、代替システムへ切り替える | ・ハード面(施設や設備など)の復旧・ソフト面(サーバーやネットワーク関連)の復旧 |
1. 被害状況・周辺地域の状況・関係先の状況の確認
災害発生時、まず始めに現状の被害状況を「確認」しましょう。社員の安否確認や、物的被害・基盤被害の確認が最優先です。
その中で最も優先することは、社員の安否確認です。スマートフォンのGPSと連動している安否確認システムを利用すれば、社員に避難指示を出せたり、緊急時の連絡ツールとして利用でき、社員の安否情報を迅速に把握することができます。
2. 代替手段での応急処置
次に、代替手段を講じることです。そのためには、事前に必要な人員や設備などを把握し、代替できる手段を構築しておくことが重要になります。
リモートワークの環境構築を行っておけば、社員が出社することなく安全な場所で業務継続が可能なため、災害発生時の人員不足にも対応することができるでしょう。
3. 事業の復旧作業
3つめは施設や設備、サーバーなどの復旧作業です。日頃から設備やシステムの稼働状況などを把握し、データの保護やバックアップ対策を講じる必要があります。
信頼のおけるクラウドサービスを利用することでリモートアクセスが可能となり、通信インフラを維持することができるでしょう。
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BCP対策にはワークフローシステム導入がおすすめ
BCPを有効に活用するためには、ワークフローシステムの導入がおすすめです。そうすることで業務の流れを可視化することができ、BCPを定期的に見直す際の基盤構築が可能になります。
ワークフローシステム導入後、社内の情報資産は自社サーバーやクラウド上に保存されます。自然災害時に生じる可能性のある書類の紛失や破損のリスクを防止でき、万が一の場合でもバックアップから復元をすることも可能です。
また、リモートワークの定着により、緊急事態発生時も安定した業務継続が可能となり、BCP強化にもつながるでしょう。実際に、新型コロナウイルスが流行拡大した際もリモートワークの実施に迅速に対応したことで、業務停滞を未然に防止できたという事例が報告されています。
このようにワークフローシステムの導入は業務効率化だけではなく、BCP運用の観点からも有効といえます。
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ワークフローシステムとは?ツール導入のメリットや選び方を紹介
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まとめ
BCPは緊急時の被害を最小限にし、会社や社員だけではなく社会全体を守るための計画です。今後生じる可能性のある緊急事態に備え、基本方針をきちんと固めた上で、手順や注意点を把握し策定することが重要になります。
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