デジタル技術を用いて業務改善や企業の変革を行うことを意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、2020年に生じた新型コロナウイルス感染拡大の影響によりリモートワーク化が進んだことで、再び注目を集めました。
しかし、そのような状況下でもDXに着手していない日本企業が多いのが現状です。そこで経済産業省は、2020年に「DX認定制度」をスタートしました。
こちらの記事では「DX認定制度」の概要や取得するメリット、申請方法や認定を受ける基準などについて詳しく紹介します。
DX認定制度とは?
DX認定制度とは、企業におけるDX推進を目的として2020年11月より開始された国の制度です。2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的次項に対応する企業が経済産業省より認定を受けることができます。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)がDX認定制度事務局として、各種問い合わせや認定審査を請け負っています。
経済産業省が示すDXの定義
経済産業省は2019年に「DX推進指標」を策定し、その中でDXを次のように定義しました。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
単に、社内にビジネス部門を設置したり、システムツールを導入したりと社内のシステムをデジタル化することがDXではありません。デジタル化を手段として活用しビジネスモデルの変革を行うことがDXであり、経営戦略とデジタル戦略を統合することで企業間の競争力を最大化することがDXの目的とされています。
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DX認定制度創設の背景
2018年に経済産業省が発表したレポートでは、企業のDX化が進まなかった場合、企業間の競争力が衰退すると報告されました。これにより2025年以降、年間最大約12兆円もの経済損失が生じると警鐘を鳴らしています。
経済産業省は2019年に「DX推進指標」を策定しました。この指標に基づいた各企業の自己診断結果をIPAが分析した結果、約9割の日本企業がDXの未着手や散発的な実施に留まっています。
2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、あらゆる社会の変化に柔軟に対応できることが重要と再認識されました。国は近年の社会情勢の変化による日本企業のDX取り組みの格差を減少、推進を図るため、DX認定制度をスタートしたという背景があります。
また、「Society 5.0」の実現により全ての人がモノとつながることで現状の課題を解決でき、新たな価値の創出への期待も向上するでしょう。
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DX認定取得のメリット
DX認定を取得することでさまざまなメリットを得ることができます。主な4つのメリットについて詳しく説明していきます。
1.DX推進時に自社の課題を整理できる。
DX認定制度を申請する際、自社の現状について自己診断しDX推進における課題を把握しておく必要があります。DX認定制度申請時に記載する書類の中でも、現在の自社での取り組みを確認する項目があり、それらを確認するプロセスを踏むことで、自ずとDX推進における課題を整理できるでしょう。
2.企業価値やブランド力が向上する
DX認定されると、DX認定事業者として「DX推進ポータル」に掲載されるほか、DX認定制度のロゴマークが使用可能です。DXや働き方改革に積極的な企業であると国から証明されることで、企業価値やブランド力の向上、顧客からの信頼獲得にもつながるでしょう。
3.税制優遇や融資などの支援を受けられる
DX認定された事業者は「DX投資促進税制」を活用し、デジタル関連投資に対して税額控除を受けることができます。具体的には、5%または3%の税額控除もしくは30%の特別償却が可能です。
また、DX認定を受けた中小企業は、実施する設備投資に必要な資金に対し基準よりも低い利率で融資を受けることが可能になります。
4.DX銘柄の応募資格が得られる
DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、経営ビジョンやビジネスモデルなど6つの評価項目をもとに経済産業省が選定している企業のことです。選定された企業は一覧に企業名が記載されるため、投資家や取引先などのステークホルダーに対してのアピールになるでしょう。DX認定が必須条件ですが、それだけではなく優れた実績が必要であるという点に注意が必要です。
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DX認定の基準
経済産業省は「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」において、企業のDX推進状況を次の4段階「DX-Ready以前」「DX認定事業者(DX-Ready)」「DX-Emerging企業」「DX-Exellent企業」に分類しました。この4段階の中の「DX認定事業者(DX-Ready)」が「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革できる準備ができている状態(DX-Ready)」として「DX認定」されます。
そして「DX認定」の申請書は、経済産業省が定める「デジタルガバナンス・コード」の項目と対応しています。
デジタルガバナンス・コードとは
DX認定の基準として、経済産業省が企業に求める企業価値向上のために実施・公表すべきことをまとめた指標が「デジタルガバナンス・コード」です。
大きく4つの項目「経営ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「成果指標」「ガバナンスシステム」で構成されており、それぞれが「DX認定制度の申請書」の項目に対応しています。
DX認定を受けるためには、「デジタルガバナンス・コード」の各項目に沿って記入しましょう。
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DX認定取得のために企業内で行うべきこと
DX認定取得を目指すため、企業内で行うべきことにはどのようなものがあるのでしょうか。各プロセスに分けて詳しく説明します。
経営ビジョンの策定
まず、自社のビジネス状況や経営環境を把握・整理し「経営ビジョン」を策定します。ビジネスモデルの方向性を自社のデジタル競争による影響を軸に検討し、経営ビジョン実現を目指しましょう。方向性を定めることで、DXの目的である企業の改革にもつながります。
そして取締役会などで承認を得たのち、外部から閲覧できる自社のホームページで公表します。
DX戦略の策定
次に、経営ビジョンに基づくビジネスモデル実現化のための戦略を練りましょう。デジタル技術の活用に必要な人材の確保や育成、外部組織との関係構築や協業などに関する検討をした後、具体的な推進計画を策定していきます。
策定が終わったら経営ビジョンの策定後同様、社内で承認を得たのち、社内外に公表しましょう。
DX戦略推進管理体制の策定
策定したDX戦略の達成度を図るための指標(KPI)を検討します。定期的に自己分析が行えるよう、戦略の推進状況を管理するための仕組みを構築しなければなりません。この指標は、定量的なものだけではなく定性的なものも含まれます。例えば、戦略によって確保されたIT人材数の計測や、社内アンケートによる業務満足度調査などが挙げられるでしょう。
経営陣から全社への情報発信
デジタル戦略を実施するために社内での共有はもちろん、ステークホルダーに対する情報発信も必要です。これらの情報発信は、経営者または経営者と同等の権限を持つ人が行います。自社のホームページや公開文書などで、経営者本人から情報発信をすることが重要です。
DX推進指標による自己診断
自社のDX推進状況の確認のため、経済産業省が取りまとめたDX推進指標を用いて診断をしましょう。この指標では、DX推進の取り組みの進捗状況が簡単に判断できます。IPAから提供されている「DX推進指標自己診断結果入力サイト」では、自己診断結果を各企業の情報をまとめた全体データと比較することが可能です。
セキュリティ対策
情報漏洩のリスクから会社を守るため、セキュリティ対策は必要不可欠です。経済産業省とIPAが取りまとめた「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に沿った対策を講じ、セキュリティ監査報告書を取りまとめましょう。各企業のセキュリティ対策の状況は、申請時の添付資料や公式ホームページでの公表資料から判断されます。
認定申請書と添付書類の提出
申請に必要な書類には、「認定申請書」「申請チェックシート」があり、必要に応じて「戦略に関する補足資料」「課題把握に関する証跡資料」を準備します。認定審査に要する期間は、原則として60日です。土日祝日と年末年始は除外されます。書類に不備があっても、修正後の再提出が可能ですが、申請には余裕を持ったスケジュール設定を行うのが無難でしょう。
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DX認定制度の申請方法
DX認定制度の申請方法や、DX認定事業者の公開について説明します。
DX認定制度申請の4ステップ
DX認定制度に申請するためには次の4つのステップを踏む必要があります。
1.「DX認定制度 申請要項(申請ガイダンス)」の確認
IPAが取りまとめた申請ガイダンスを確認し、申請時に必要な書類や手順を確認します。
2.「認定申請書」と「認定チェックシート」の準備
IPAのwebサイトで「認定申請書」と「認定チェックシート」をダウンロードし記入します。必要に応じて補足資料も準備しましょう。
3.「DX推進ポータル」上で申請
事前にgBizIDを取得し、DXポータルへアクセスします。ログイン後、申請書をアップロードし申請を完了させましょう。
4.認定結果の受領
申請の受理後、60日間の審査期間を経たのち、認定結果はメールで通知されます。
DX認定事業者の公開
DX認定を受けると、「DX推進ポータル」内の「DX認定制度認定事業者一覧」へ掲載されます。一覧に掲載される項目は、取得年月日、企業名、代表者氏名、所在地などです。DX認定を受けた事業者が作成した申請書も公開されており、ダウンロードも可能となっています。申請を検討している事業者は、申請書作成の参考になるでしょう。
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まとめ
停滞しているDX推進化を後押しするために制定されたDX認定制度は、日本企業にさまざまなメリットをもたらします。社会情勢の変化に負けない強い会社を作るためにも、まずは自社のDX推進における課題を把握するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
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