働き方改革や新型コロナウイルスの流行を受けて、リモートワークを導入している企業が急増しています。自社でもリモートワークを導入したいと考えている企業は多いのではないでしょうか。
リモートワークを導入するためには、まずリモートでも働けるようにシステム環境や社内ルールを整備していくことが必要です。今回は、リモートワークを上手に導入するための手順や、導入に関する助成金についてご説明します。
リモートワークとは?
リモートワークは、「遠隔」を意味する「Remote」と仕事を意味する「Work」から成り立つ造語です。オフィスから離れた遠隔の場所で仕事をするという意味を持ち、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務が該当します。
場所にとらわれずに働くことや、密を避けて労働することができるとして、近年注目されています。
テレワークとリモートワークの違い
テレワークとリモートワークに厳密な違いはありません。一般的には同義の言葉として普及し、利用されています。
テレワークという言葉は「離れて」を意味する「Tele」と仕事を意味する「Work」から成り立つ造語で、会社から離れた場所で労働する働き方を意味します。言葉の組み合わせからも、リモートワークと同じ意味を持つ言葉であることがわかるでしょう。
厚生労働省と総務省が公開している「テレワーク総合ポータル」では、テレワークが次のように定義されています。
”「テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。」”
引用元:テレワーク総合ポータル「テレワークについて」
自治体や国といった公のアナウンスでは「テレワーク」が使われていますが、ベンチャー企業やIT企業では「リモートワーク」という言葉が用いられていることも多いようです。テレワークとリモートワークは同じものだと捉えても、大きな問題はないでしょう。
日本国内のリモートワークの実施状況について
働き方改革の推進や、長引くコロナ禍を受けて、近年さまざまな企業がリモートワークを導入しています。総務省は「令和3年通信利用動向調査」において、5,966企業を対象にリモートワークやテレワークの実施状況を調査しました。
同調査では、6割近くの企業がテレワークを導入していると回答し、幅広い産業で半数を超える企業がテレワークを導入しているというデータが得られています。情報通信業や金融・保険業での導入割合は特に高く、8割以上の導入状況が確認されました。また導入割合は、ほとんどの産業で令和2年度よりも伸びています。
引用元:総務省「令和3年通信利用動向調査」
同調査では、リモートワークやテレワークの主な導入目的も尋ねています。回答は割合が高かった順に、次のような結果になりました。
1.新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため・・・90.5%
2.勤務者の移動時間の短縮・混雑回避・・・37.0%
3.非常時の事業継続に備えて・・・31.1%
4.勤務者のワークライフバランスの向上・・・27.9%
5.業務の効率性(産業性)の向上・・・27.6%
導入目的に対して効果があったか尋ねる質問では、 74.3%の企業が効果があったと回答したということです。
新型コロナウイルスの流行が落ち着きはじめているとはいえ、まだ油断はできない状況です。また、従業員のワークライフバランスの重要性も見直されており、長時間労働の是正や多様な働き方につながる環境改善が求められている傾向があります。今後もリモートワークを導入する企業が増えていくのではないでしょうか。
リモートワーク導入の進め方
リモートワークの導入には、システムの準備や社内ルールの変更などが必要なため、段階を踏んで進めていかなければなりません。リモートワーク導入の進め方として、効率よく導入できる手順を説明します。
導入の目的・優先順位を明確にする
まずは、何を目的にリモートワークを導入したいのかということを明らかにしておきましょう。複数の効果を狙って導入を考えている場合は、優先順位を付けておきます。
導入形態も検討しなければなりません。リモートワークには主に次の3種類があります。
・自宅で仕事をする在宅勤務
・施設利用型のサテライトオフィス勤務
・移動中などに業務を行うモバイルワーク
目的に合ったリモートワークの形態を選ぶようにしましょう。
リモートワーク導入の対象にする部門や従業員、業務内容や実施頻度も決めて、方針を定めておく必要があります。
現状の把握
方針が定まったら、社内ルールやシステム環境の現状を把握します。
リモートワークを導入すると、これまでの始業や就業に関する規則が適用しにくくなるかもしれません。社内にタイムレコーダーなどで勤怠を管理している場合は、遠隔地でも使えるシステムに見直しが必要です。
また、ICT環境やセキュリティ面に不足があれば環境整備をしていく必要もあります。現状を正しく把握し、リモートワークを導入するにあたって不足している部分を洗い出しましょう。
導入に向けた社内の推進体制の構築
社内の推進体制を整えて確立しておくと、スムーズにリモートワークの導入を進められます。リモートワーク導入のために、社内の横断的なメンバーを集めたプロジェクトチームを用意しましょう。チームには、経営企画部門に加えて、人事・総務部門や情報システム部門などと、各部門の代表を含めておきます。
社内ルールの作成
リモートワークを導入すると、従来の社内のルールでは対応できなくなる場合も少なくありません。勤怠管理などが従来の方法では難しくなる場合、新しい手段を検討しましょう。導入時に初期費用はかかりますが、リモートワークに対応したITツールを導入すると、手間なく従業員の勤怠を管理できるので便利です。
また、リモートワークの勤務を命じる際の規定や、労働時間、通信費などの負担に関する就業規則は新設する必要があります。労働時間に関しては、リモートワークの導入が長時間労働につながってしまうケースもあるので気を付けて定めましょう。
新しいルールを作成したら社内教育や研修を行って、リモートワークへの理解を広げると効果的です。
社内システム環境の整備
リモートワークを行う業務の内容に合わせてITツールやセキュリティシステムを導入し、社内システム環境の整備を行います。特に下記の4項目では、リモートワークに合わせた新しい対応が必要です。確認しておきましょう。
ネットワーク環境
自宅やサテライトオフィスなどから社内システムに接続できる環境を構築する必要があります。リモートワークで使用する従業員用端末の用意も検討しましょう。
オンライン化
会議やミーティングをオンラインで行えるように整備します。またワークフローシステムなどを活用し、電子化した書類で業務を進められるようにすることも必要です。
電話環境
社内で受けていた外線・内線の電話も、リモートワークに対応させられるツールがあります。電話に関する業務がある場合は検討しましょう。
情報セキュリティ対策
リモートワークを導入すると、従業員が業務の情報や個人情報を社外で扱う機会が増えます。悪意のあるコンピューターウイルスや不正アクセスへの対策や、端末の紛失・盗難に対応できるように情報セキュリティを高めておきましょう。
導入における課題の見直しと改善
リモートワーク導入後は定期的に、想定していた目的が達成できているか見直しを実施します。また、導入したことで困難になった業務があれば、改善策を考えなければなりません。見直しと改善を繰り返しながら、自社に合ったリモートワークに取り組んでいきましょう。
リモートワークの導入に関する助成金・補助金
働き方改革推進のために、テレワークやリモートワークに関する助成金が用意されています。また、リモートワークは新型コロナ対策としても有効であるとされ、感染拡大時には補助金の対象となる場合があります。
補助金制度を検索できる「補助金ポータル」などを活用しながら探してみるとよいでしょう。
本記事では、過去の募集の例として以下の4つを挙げておきます。今後もこのような助成金への募集をする可能性があるため、補助金ポータルなどを適宜チェックして活用するとよいでしょう。
テレワーク促進助成金
都内の中堅企業や中小企業を対象に、リモートワークの環境整備にかかる費用が助成される制度です。リモートワーク機器やソフト等の導入に活用できます。
応募条件としては、1000人以下の事業者で、都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」「テレワーク東京ルール実践企業宣言制度」への参加が必要です。
助成金額は事業者が常時雇用する労働者数に応じて、下記のように定められています。
・2人以上30人未満の場合、助成金の上限は150万円、助成率2/3
・30人以上999人以上の場合、助成金の上限は250万円、助成率は1/2
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
働き方改革推進にともない、厚生労働省が制定している助成金です。長時間労働の是正やワークライフバランスの改善を目的に制定されています。
リモートワーク用通信機器の導入・運用に加えて、研修や啓発、外部専門家によるコンサルティングを行う取り組みも助成の対象になります。取り組みに成果目標を設定する必要があり、達成状況に応じて助成金額が決められているようです。
働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
新型コロナウイルス感染症への対策として制定された制度です。緊急事態宣言が発令されている地域に事業所のある中小企業が対象となっています。
新型コロナウイルス感染症対策 (新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
新型コロナウイルス感染症の拡大防止や、緊急時の事業継続対策としてリモートワーク環境の整備を行う事業所に向けた助成金です。都内の雇用労働者1000名未満の中堅・中小企業等が対象です。情報通信機器等の導入にかかった費用などが助成されます。
まとめ
リモートワークの導入は、労働環境改善や感染症対策などさまざまな効果が期待できます。しかし、いきなり多くの効果を得ようとすると、環境整備や従業員の教育が追い付かず、問題が発生してしまうケースも少なくありません。まずは導入目的の優先順位を決めて、計画を立てていくとよいでしょう。
導入目的によって、必要なITツールやセキュリティ対策も異なるものです。自社の目的に合った社内環境を整えたい場合は、『J’s X(ジェイズクロス)』のようなソリューションの活用をおすすめします。J’s Xは、あらゆる業務プロセスをシンプルにするソリューションサービスです。J’s Xの業界別テンプレートや導入コンサルを活用すれば、自社に最も合ったリモートワーク環境を構築することができるでしょう。ぜひ検討してみてください。