現在日本では、DXに取り組みはじめる企業が年々増加しています。実際に取り組みはじめると、DX推進における課題も明らかになってきました。
本稿では、DX推進における課題にはどのようなものがあるのか、課題をどのように解決すればよいのかについて解説します。DX推進の際の課題を知りたい方はもちろん、今現在課題に直面し悩んでいる方も、本稿を参考にしてみてください。

日本におけるDX推進の現状
「一般社団法人日本能率協会」が2022年に行った調査によると、55.9%の企業がDXへの取り組みをすでにスタートさせていることがわかりました。この割合は過去3年で2倍近くになっています。
従業員規模別に比較すると、DXの取り組みをはじめている企業の割合は以下のとおりでした。
・大企業(従業員数 3,000 人以上):8割以上
・中堅企業(従業員数 300 人以上~3,000 人未満):6割程度
・中小企業(従業員数 300 人未満):4割程度
まだ取り組めていない場合でも、「検討を進めている」「これから検討する」と回答した企業は多く、企業の規模に関わらずDXに高い関心があることが明らかです。

引用元:一般社団法人日本能率協会「『日本企業の経営課題 2022』 調査結果速報 【第 1 弾】」
同調査では、DXの取り組みによって成果が出ているかどうかも尋ねています。それによると、DXによる成果を感じている企業は、前年より11.8%増え7割を超えました。
とはいえ、「おおいに成果が出ている」「成果が出ている」と回答した企業は比較的少なく、成果を感じている企業の半数以上が「ある程度の成果が出ている」との回答でした。現段階では、多くの企業がDXの推進途上であることが伺えます。

引用元:一般社団法人日本能率協会「『日本企業の経営課題 2022』 調査結果速報 【第 1 弾】」
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DX推進の課題
先ほど紹介した調査では、DX推進の課題についても尋ねています。その結果から、以下のような点を課題として認識している企業が多いことがわかりました。
・DXに対するビジョンや経営戦略が明確になっていない
・DX人材が足りない
・社内関係部署における情報の共有・連携ができていない
・経営資源の投入ができていない
ここからはDX推進における上記4つの課題について、くわしくみていきます

引用元:一般社団法人日本能率協会「『日本企業の経営課題 2022』 調査結果速報 【第 1 弾】」
DXに対するビジョンや経営戦略が明確になっていない
「DXに対するビジョンや経営戦略が明確になっていないこと」は、DX推進において大きな課題となっています。実際、前出の調査では7割近くの企業が「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」という課題を抱えていることがわかりました。
そもそもDXは、単なるデジタル化を意味するのではなく、IT技術の導入や業務改善を通して、企業全体に変革をもたらすことを意味します。ビジネスに変革を加えるには、ビジョンや経営戦略を明確に確立することが重要です。
ビジョンや経営戦略があいまいなままDXを進めてしまうと、ある程度の成果で満足してしまうケースも出てくると考えられます。企業全体の変革にまで至らず、結果的に中途半端な状態で終わってしまうかもしれません。
DX人材が足りない
「DX人材が足りないこと」も、DX推進における大きな課題といわれています。前出の調査でも、「DX 推進に関わる人材の育成が思うようにできていない」「DX 推進に関わる人材の採用が思うようにできていない」ということに課題を感じている企業はいずれも8割超となっています。
DX人材には、ITやDX、自社の業務に関する知識のほか、変革を起こすマインドセットなども必要です。DX人材の絶対数が足りないこともあり、現在、多くの企業でDX人材を確保することが急務となっています。
▼関連記事
DX人材とは?必要なスキルやマインド・採用 / 育成の方法について解説
社内関係部署における情報の共有・連携ができていない
DX推進の課題には「社内関係部署における情報の共有・連携ができていないこと」も挙げられます。前出の調査において、「社内関係部署の連携が十分にできていない」ことを課題として認識している企業は半数以上でした。2021年より減少しているものの、依然課題として認識している企業は多いようです。
DXは全社的な取り組みであるため、部署間での情報共有や連携が欠かせません。しかし部署によっては、DX推進への抵抗感があったり、DXを推進しないことへの危機感が少なかったりすることもあるでしょう。部署間でDX推進についての温度差があると、スムーズに連携できず、DXの推進が難しくなることが予想されます。
経営資源の投入ができていない
「経営資源の投入ができていないこと」もDX推進の課題のひとつです。具体的には、DX推進やDX人材確保のための資金不足が挙げられます。前出の調査では、「経営資源の投入が十分にできていない」ことに課題を感じている企業は過半数を占めました。
経済産業省の資料(デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討)によると、現在、企業が使うIT関連費用の80%が既存システムの維持管理に使われています。新たにDXを推進するための資金は20%ほどしか残されておらず、多くの企業で戦略的なIT投資ができていないのが現状です。
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DX推進の課題を解決に導く方法
前章で紹介したようなDX推進の課題を解決するには、どのような取り組みが必要になるのでしょうか。ここからは、それぞれの課題に対する解決のヒントをお伝えします。
DXに対するビジョンや経営戦略の明確化
「DXに対するビジョンや経営戦略が明確になっていない」という課題を抱えている場合は、とくに経営層がDXについてより深く考える必要があります。
DX戦略の方向性を明らかにするため、以下のようなことを検討しましょう。
・どのような価値を創出するのか
・どのような変革を起こすのか
・どのようなビジネスモデルを思い描いているのか
ビジョンや経営戦略が明確になったら、関係部署間でそれらを共有することも大切です。そうすることで、関係部署が同じ目線でDXを進められるでしょう。
DX人材の採用と育成
「DX人材の不足」に課題を感じている場合は、人材確保の方法を模索することが必要です。人材確保には以下の3つの方法が考えられます。
・DX人材の採用
・DX人材の育成
・アウトソーシング
それぞれみていきましょう。
DX人材の採用
DXの推進に早めに着手したい場合は、新たにDX人材を採用する方法が有効です。
この方法の大きなメリットは、すでに専門的なスキルや知識を有する人材を採用できる点です。とくに、プログラマーやエンジニアといった、ハイレベルかつ専門的なスキルや知識を要する職種は、育成するにも時間を要します。このような人材を確保したい場合は、新たに採用する選択肢も検討してみるとよいでしょう。
ただし、DX人材の需要は高まっています。そのため人材が流動的であることも否定できません。優秀な人材を採用できるよう、働きやすい職場環境や正当な評価制度などを整える必要もあるでしょう。
DX人材の育成
自社のビジネスを理解している人とともにDXを推進したい場合は、既存の社員をDX人材に育成するのもひとつの方法です。
育成方法には以下のようなものがあります。
・勉強会・OJT・セミナーなどへの参加を促す
・社外の研修への参加を促す
・ベンダー企業へ出向させる
・資格取得のサポートをする
DX人材を育成しようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。短期間でDX人材を育成したいなら、ある程度のIT技術をもつ社員を育成し、専門的なスキルを身につけてもらうとよいでしょう。DX人材を育成する場合は、育成対象者と育成方法の両方を検討することが必要です。
アウトソーシングという方法も
とにかく早くDXに着手したい場合は、IT経営の専門家やIT系のベンダー企業などにアウトソーシングしてもよいでしょう。資金力は必要ですが、人的リソースを割くことなくスピーディにDXをはじめられます。
アウトソーシングする際に注意すべき点は、任せきりにしないことです。任せきりになってしまうと、自社が思い描くDXを実現することは難しく、本来の意味でのDXを達成することはできないでしょう。アウトソーシングしながらも、社内でDX人材を確保できる仕組みを整えることをおすすめします。
DXを推進するための社内体制の確立
「社内関係部署における情報の共有・連携ができていない」という課題を感じている場合は、社内体制の整備を検討しましょう。DXに対して部署間で温度差を生じさせないためには、社員に対しても情報を共有することが大切です。
経営層は、社員に以下のような点について丁寧に説明しましょう。
・DXを推進するメリット
・DXを推進しない場合のリスク
・DX推進における自社のビジョンや経営戦略
社員は変化に不安を感じていることも多く、不安から抵抗感を示すケースもあると考えられます。経営層は、社員の状況に寄り添いながら繰り返し説明し、社員の抵抗感を拭えるよう努める必要があります。社員がDXの必要性を理解し協力してくれれば、社内での連携が容易になり、DXを進めやすくなるでしょう。
社員への説明と同時に、IT部門をDX推進のリーダー部署にする、DX推進のための部署を新たに立ち上げるなど、自社に合う体制作りも進めましょう。
DXを推進するためのシステムの導入
「経営資源の投入ができていない」という課題を抱えている場合は、既存システムの見直しや新システムの導入が効果的です。先ほども紹介したように、現在IT関連費用の80%が既存システムに使われており、多くの企業が新たなシステムの導入ができない状況です。
このような状態を解決するには、既存システムの現状や問題点を正しく把握することが求められます。そのうえで、自社の変革に対応できるか、新たに導入するシステムとの連携ができるかなどの観点から、既存システムを残すべきなのかを判断します。
既存システムでDXに対応できそうにない場合は、新たなシステムの導入も検討する必要があるでしょう。
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DX推進の課題解決の参考にすべき成功事例
DX推進に際し、ほとんどの企業がなんらかの課題を抱えていることでしょう。しかしそのような状況の中でも、うまく課題を解決しDXを成功させている企業はたくさんあります。
「【DX推進の成功事例13選】国内・海外の事例をさまざまな業種別に紹介」の記事ではDXの成功事例を13例紹介しています。課題解決の参考としても役立ちますので、ぜひご覧ください。
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まとめ
現在の日本において、DXの必要性はかなり浸透しており、DXに取り組みはじめている企業も増えています。その一方で、課題に直面し、思うように進まないと悩んでいる企業も多いようです。本稿を参考に、自社の抱える課題に取り組んでみてください。
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