近年、IT業界を中心に「プロビジョニング」という言葉がよく聞かれるようになりました。
しかし、さまざまな分野で幅広く使用されているがゆえに意味があいまいになり、プロビジョニングが一体どういう意味なのか、正確に理解している人は少ないかもしれません。
また、私たちの身近な場面でも、プロビジョニングは活用されているのですが、そのことは、あまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では、プロビジョニングの意味や種類、それぞれのプロビジョニングの違いを解説し、身近な活用場面についてもご紹介します。プロビジョニングについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
プロビジョニングとは
プロビジョニング(provisioning)は、「provision」という「供給」「準備」の意味をもつ英語から派生した言葉です。本来は、長旅に向けて食料や水などの確保をするという意味で使われていました。
それが、通信分野やIT分野でも次第に使われるようになり、現在、IT分野では、「サービスやコンピューター設備などのリソースを、必要に応じてユーザーに供給できるように予測し準備すること」を指す用語として使用されています。
プロビジョニングを取り入れるメリットは、ユーザーの需要(利用状況や要求)を予測してリソースを準備しておくことで、実際にユーザーから要求や申請を受けたときに、迅速にそのリソースを割り当てられることにあります。
最近では、社員のアカウント管理などの際にもプロビジョニングが活用されるようになり、特定の業界だけではなく、より多くの人に知られるようになってきました。
プロビジョニングとITの関係性
プロビジョニングは、元々は通信分野で広く使われていた言葉で、回線設備などに対して活用されていました。
しかし現在では、IT分野でもプロビジョニングがさまざまな技術に取り入れられるようになり、それに伴って、プロビジョニングの活用の場も増えてきています。
Amazonが提供するクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」もその一例です。AWSでは、プロビジョニングを活用することにより、システムを構築するためのリソース(サーバー、ネットワーク、ストレージなど)を必要に応じて流動的に提供するサービスを実現しています。手動で行うと時間と労力が必要になり、担当者の負担が大きくなってしまうプロビジョニングを、AWSでは自動で行うことができ、環境構築を簡単に実行できます。このようなIT技術をいかしたプロビジョニングの自動化は、今後ますます増加していくでしょう。
プロビジョニングとシンプロビジョニングの違い
プロビジョニングと似ている言葉に「シンプロビジョニング」という言葉があります。ここでは、シンプロビジョニングの意味と、プロビジョニングとの違いについて説明します。
シンプロビジョニングとは
シンプロビジョニングはストレージに対して使われる手法です。シン(thin)には「薄い」という意味があります。薄くストレージを供給する、つまり、ストレージ仮想化の技術を用いて、その場その場で必要な分だけストレージを効率的に割り当てるという技術です。ここでいうストレージとは、サーバーにおける保存領域のことです。
シンプロビジョニングが用いられている身近な例としては、クラウドストレージサービスの「Googleドライブ」などがあります。Googleドライブでは、シンプロビジョニングの技術を用いることにより、必要になった時に必要な分だけ容量を追加してユーザーが利用することを可能にしているのです。
一般的にサーバー構築の際には、ストレージ容量が不足しないように、想定される利用量より多く容量を確保しています。ただ、この従来の方法では、実際には想定の2〜3割しか利用されないことがほとんどなので、残った容量が無駄になってしまうのです。このような容量の無駄を排除するための技術が、シンプロビジョニングです。
では、シンプロビジョニングを用いることで、どのように無駄を排除することができるのでしょうか。
シンプロビジョニングの仕組みとメリット
例えば、サーバー側がストレージに10TBの容量を要求したとしましょう。その際、実際に使用されるのは2~3TB程度です。そこで、その2~3TBには物理的に容量を割り当て、残りの7〜8TBには仮想化した容量を割り当てます。そうすることで、無駄を省きながら、サーバー側には10TBの容量を割り当てられたと認識させることができるのです。
このように、シンプロビジョニングによって、サーバーが要求する容量を仮想的に割り当てることで、ストレージ容量を過不足なく効率的に利用することが可能になります。
物理的な容量を減らせるということは、その分、必要となるハードウェアも減らすことができ、コスト削減にもつながります。
プロビジョニングとシンプロビジョニングの違いとは
ストレージにおけるプロビジョニングは、複数のストレージを仮想的に統合して1つのストレージとして利用することで、必要な場合に備えて準備し、供給を可能にするというものです。
それに対し、シンプロビジョニングは、ストレージを仮想化した上で、各サーバーが実際に利用している容量だけを割り当てることができる技術を指します。物理容量と仮想的に拡大した容量を効率よく割り当てて、無駄を削除することを可能にしたものなのです。
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その他のプロビジョニングの種類
先ほど解説した「シンプロビジョニング」以外にも、さまざまな種類のプロビジョニングがあります。ここでは、代表的なものを4つ紹介します。
サーバー・プロビジョニング
「サーバー・プロビジョニング」とは、サーバーが運用できるようになるまでの作業全般のことです。具体的には、OSやソフトウェアの導入から、各種システムの設定やサーバーの割り当てなどの一連の作業を指します。
また、システム障害発生時の対応や、サーバーのメンテナンス時の作業、メインサーバーが使えないときの予備サーバーの調整なども、サーバー・プロビジョニングに該当します。予備サーバーを準備しておくことで、障害発生時にもサービスを停止することなく、障害原因の究明や対処が可能になるのです。
サービス・プロビジョニング
「サービス・プロビジョニング」とは、主にISP(インターネットサービスプロバイダ)とよばれるインターネット接続事業者が、ユーザー向けにサービスの提供や設定を行うことをいいます。
自宅や会社でインターネットを使用するために欠かすことができないのが、インターネット回線です。インターネット回線の構築には、機器の準備だけでなく、DNSサーバーの設定やISP専用のメールアドレスの発行、FTPの設定などが必要です。これらが、サービス・プロビジョニングの一例ですが、インターネット回線契約後に、ユーザーにメールアドレスやパスワードを提供することもサービス・プロビジョニングに含まれます。
ユーザー・プロビジョニング
「ユーザー・プロビジョニング」は、「アカウント・プロビジョニング」「IDプロビジョニング」とも呼ばれ、アカウントを利用するための一連の準備に関わる作業のことです。
具体的には、システムやアプリケーションを利用する際のユーザーのアカウント情報作成や、パスワード設定、権限付与、ソフトウェア設定などが挙げられます。時限式パスコードのような二段階認証の設定もユーザー・プロビジョニングの一環で、セキュリティの観点からも非常に重要です。
最近では、多くの企業でクラウドサービスが利用されるようになり、企業のIT管理者には社員のアカウント管理が求められるようになりました。煩雑になりがちなアカウント管理も、ユーザー・プロビジョニングを自動化することにより、効率的に行うことができます。
ネットワーク・プロビジョニング
「ネットワーク・プロビジョニング」は、ネットワークのセットアップに必要な機器や配線、通信サービスなどをユーザーに提供する方法です。
主に通信業界で使われることが多く、ユーザー向けの無線環境サービスの有効化なども、ネットワーク・プロビジョニングに該当します。
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身近なプロビジョニングの利用場面
ご紹介してきたプロビジョニングの中には、一部の業界や専門家によって利用されているものも多いのですが、私たちの身近なところでも、プロビジョニングは利用されています。どのようなものがあるか、見ていきましょう。
プロビジョニングサービス
プロビジョニングサービスの一例としては、パソコンの初期設定の際に活用できる「プロビジョニング・パッケージ」という、Windows10から登場した新たな提供形態があります。
「プロビジョニング・パッケージ」を実行することで、必要な設定やアプリケーションのインストールを完了することができるのです。すでにインストールされているOSやアプリケーションを削除・再設定する必要もないので、IT管理者やユーザーの負担軽減につながるでしょう。
機種依存に関しての問題も解決しているため、さまざまな機種のパソコンにサービスを反映させることができます。
プロビジョニングされていないSIM
ほかにも、身近なプロビジョニングの活用例として、携帯電話やスマートフォンで使われる「SIMカード」があります。
携帯電話にSIMカードを挿入しても、そこに契約者の情報が書き込まれていなければ、通信サービスを利用できません。携帯電話会社が契約者情報をSIMカードに書き込み、ユーザーが使える状態にすることを「SIMのプロビジョニング」といいます。プロビジョニングされていないSIMとは、プランの解約や、乗り換え手続きが未完了であることなどが原因で、契約者情報を読み込めない状態になっているということです。
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まとめ
活用事例を交えながら、ここまで、さまざまなプロビジョニングについて解説してきました。私たちの生活の中には、想像以上にプロビジョニングの技術が取り入れられているということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
中でも、ユーザー・プロビジョニングは特に身近なものといえます。そして、そのユーザー・プロビジョニングの自動化は、リモートワークの増加やクラウドサービスの普及といった社会的背景もあり、多くの企業にとっての課題となっています。
業務を効率化し、生産性を向上させるためにも、自動化できる業務を洗い出し、積極的に自動化していきましょう。
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