経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」が差し迫る今、すべての日本企業にDX推進が求められています。数ある業種の中でも、DXの推進が急務とされているのが建設業界です。
この記事では、建設DXとは何か、注目されている理由や背景について解説します。建設DXを導入するメリットや国の取り組みについても紹介するので、建設DXの導入を検討している方はぜひ参考にしてださい。
建設DXとは
建設DXとは、建設業界にDXを導入して活用することです。具体的には、さまざまなデジタル技術を用い、これまでの業務プロセスに革新的な変化をもたらすことを指します。
これまでにも業務効率化を図るために、デジタル技術が導入されています。しかし、建設DXは単なる業務効率化を目指す取り組みではありません。
建設業界は、アナログ体制や人手不足など、いくつもの課題を抱えている業界です。このような課題を解決するために、建設DXで生産プロセス全体の最適化を目指すのが建設DXです。
そもそもDXとは?
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略した言葉です。日本語に直訳すると「デジタルによる変容」という意味になります。
2004年、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が発表した論文の中で「ITをさまざまな分野で浸透させることで、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」と提唱したことがDXのはじまりです。
日本におけるDXの定義は、企業がデジタル技術を活用することで、組織自体を変革していくと同時に、現代社会における自社の競争力を高めることと捉えられています。
産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進|経済産業省DX
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建設業界でDXが注目されている理由・背景
商社、小売、金融、サービス、通信など、さまざまな業界がある中で、とりわけDXが注目されているのが建設業界です。
なぜ、建設DXが注目されているのか、理由や背景についてみていきましょう。
人材不足
建設業界でDXが注目されている理由としてまず挙げられるのが、深刻な人材不足です。
2021年に国土交通省により発表された「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によると、建設業の就業者数は平成9年に685万人をピークに減少傾向にあり、令和3年時点では482万人にまで落ち込んでいます。
また、建設業就業者は55歳以上が35.5%、29歳以下が12.0%と高齢化が進んでいます。慢性的な人手不足に加え、次世代への技術承継も建設DXが急務とされる理由といえるでしょう。
最近の建設業を巡る状況について【報告】
働き方改革
建設DXが急がれる背景には、日本が国をあげて取り組んでいる働き方改革があります。
2019年に働き方改革の一環として「労働基準法」が改正され、時間外労働の上限規制が原則として月45時間、年360時間と定められました。時間外労働の上限規制に対して、建設業には5年間の猶予が与えられたものの、その期限である2024年4月がすぐそこまで迫っています。
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生産性の低さ
生産性の低さも、建設業界が抱える課題です。
「建設ハンドブック2021」によると、1人の労働者がどれだけの付加価値が高い仕事をしているかを示す付加価値労働生産性が、全産業平均が4,525.1円/人・時間であるのに対し、建設業は2,872.9円/人・時間と、平均を大きく下回っています。この結果により、建設業界は生産性の低いことが顕著となりました。
テレワークに切り替えられない
総務省が発表した「情報通信白書 令和3年版」の業種別・テレワークの実施状況によると、2020年におけるテレワーク実施率の全体平均は24.7%です。一方で、建設業界のテレワーク実施率は15.7%と低く、全体平均を大きく下回っています。
現場での作業をメインとする、アナログな働き方が根強く残る建設業界では、テレワークに切り替えることは非常に困難です。このような環境の中で、どのようにDXを推進するのかが、建設DXが注目される背景にあります。
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建設DXを導入するメリット
建設DXを導入することで得られるメリットについて、詳しくみていきましょう。
業務効率化
建設DXの導入は、業務効率化に役立ちます。
たとえば、3Dデータを活用し、立体的な図面に変換することで、視覚的に図面を理解できるようになります。情報共有がスムーズになるため、現場に出向くことなくオンラインでの打ち合わせが可能となるでしょう。
これまで移動に費やしていた時間は、他の業務に当てることができるため、業務を効率良く進められます。
省人化
DXの導入によって業務の省人化が図れることは、人手不足が深刻化している建設業界にとって大きなメリットといえるでしょう。
デジタル技術による重機の遠隔操作が可能となった場合、遠方からの操作や複数の重機を操作することが可能となり、省人化が図れます。現場から離れた場所から作業を行うことで、危険作業リスクも改善され、職場環境の改善も期待できるでしょう。
技術継承がしやすくなる
建設DXの導入によって、次世代への技術承継の停滞も防げる可能性もあります。
デジタル技術を活用することで、熟練技術者のノウハウをデータに残せるようになります。これまで熟練技術者から直接学ぶことしかできなかったノウハウを、組織全体で共有することで、技術継承がしやすくなるでしょう。
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建設DXで用いられるデジタル技術
建設DXの推進には、デジタル技術の活用が必要不可欠です。建設DXで用いられる、具体的なデジタル技術について紹介します。
BIM/CIM
BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling)とは、計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することで、その後の施工管理などの各段階でも情報共有を容易にし、生産性向や管理システムの効率化を図る取り組みです。
着工後の手戻りやミスを大幅に削減できます。コストの削減や作業工程の短縮、安全性の向上といった、さまざまな効果も期待できるデジタル技術です。
ドローン
ドローンとは、遠隔操作や自動制御によって飛行できる航空機です。
カメラを搭載したドローンであれば、建設現場や建築物の撮影や測量が可能です。空中飛行により、さまざまな角度から撮影できるため、高所や山林の険しい急斜面の確認も容易となります。確認作業が短時間で済み、危険が伴う場所に立ち入る必要もないため、業務効率化が図れます。
第5世代移動通信システム(5G)
5Gとは、「5th Generation」を略した言葉で、次世代移動通信規格のことです。
前世代の通信規格である4Gと比較すると、5Gでは超高速で大容量の通信ができます。さらに、通信の遅延が低くなることで接続が安定し、多くの機器の同時接続が可能となります。5Gを導入することによって、よりリアルタイムの通信が可能となり、生産性の向上が期待できるでしょう。
SaaS(クラウドサービス)
SaaSとは、「Software as a Service」を略した言葉です。クラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由でユーザーが利用できる仕組みを指します。
インターネット環境とアカウントがあれば、どこからでも利用が可能です。例えば、建設現場とオフィスのように離れた場所にいても、クラウドサービスにアクセスすることで、建設状況をリアルタイムに共有できます。
AI
AIとは、「Artificial Intelligence」を略した言葉で、日本では人工知能と呼ばれています。人間のように、コンピュータが自ら学習することを特徴とした技術です。
建設業界では、AIが現場の映像を自動判定し、進捗状況のチェックや事故の防止に役立てられています。コンピューターは計算が得意であることから、建物の安全性を検討・確認する構造計算や解析の分野にも役立ちます。
ICT(情報通信技術)
ICTとは、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」を略した言葉です。デジタル技術の中でも、コミュニケーションや情報共有の技術を指します。
建設DXでは、スマホやタブレットによる図面や工数の確認、映像システムを用いた遠隔での業務指示などにICTが活用されています。
IoT
loTとは、「Internet of Things」を略した言葉です。モノのインターネットと呼ばれ、いままでインターネットに接続されていなかったモノをネットワークに接続し、情報共有を実現する仕組みです。
建設DXでは、設備機器にセンサーを取り付けて車両の進入を知らせたり、ヘルメットにセンサーを取り付けて健康管理を行ったりなど、さまざまなシーンでloTが活用されています。
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建設DXに関する国の取り組み事例
現在、日本では政府が主導となって、企業のDX化を推進しています。建設DXに関しては、どのような取り組みが行われているのかをみていきましょう。
i-Construction
i-Construction(アイ・コンストラクション)は、2016年に国土交通省が主導で始動したプロジェクトです。建設業界のプロセスにICTなどのデジタル技術を導入し、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目指しています。
建設DXを、より具体的な施策や数値目標に落とし込んだ国の取り組みといえるでしょう。
BIM/CIM原則適⽤
国土交通省は、2023年までに「小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用」とすることを発表しました。BIM/CIM原則適⽤は、建設DXに欠かせないBIM/CIM導入を後押しする取り組みです。
本来「2025年までに全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用する」ことを目標に掲げていた取り組みですが、新型コロナウイルス感染症の影響により、2年前倒しとなりました。
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建設DXを進める4つの手順
アナログで複雑な作業が多い建設業界は、ほかの業界に比べてDX化が難しいとされています。闇雲に推進するのではなく、ポイントをおさえながら着実にDXを目指す必要があるでしょう。
ここでは、建設DXをスムーズに推進するための手順について紹介します。
現場の業務全体と課題の把握
建設DXの取り組みは、まずは業務プロセスをすべて洗い出し、課題を把握することからはじめましょう。
現場の課題を把握するためには、現場の声に耳を傾けることが重要です。人手不足や長時間労働など、建設業界が抱える課題は多岐に渡ります。適切な建設DXを進めるためにも、現場の意見を聞き、問題や要望を把握することが大切です。
建設DXの目的と戦略の策定
課題が明確化した後は、その課題を解決できるよう、建設DXの目的や戦略を策定しましょう。
建設DXは組織一丸となって取り組まなければ実現しません。長期にわたり現場で作業をこなしてきた社員にとって、デジタル技術の導入を伴うDX化は、無理に進めようとすると反発を招く恐れもあります。
建設DXの目的や戦略は経営陣だけでなく、組織全体で共有し、理解を促しましょう。
建設DXに向けた体制の整備
いくら最新のデジタル技術を導入したとしても、有効活用できなければビジネスの変革は難しいでしょう。建設DXをより確実に実現するためには、組織の体制整備も大切です。
DX推進の専門の部署を設置やIT人材の確保など、現場と密に連携を取りながら社内の体制を整備します。社内リソースが不足している場合は、外部パートナーへの委託も検討するとよいでしょう。
施策の実施と定期的な効果検証・改善
施策を実施したあとは、定期的な効果検証を行い、無駄を排除したり問題を解決したりと改善することも重要です。
システムエラーの有無だけでなく、業務に支障が出ていないかなど社員の状況についても確認することで、より質の高いDXが実現できるでしょう。
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まとめ
人手不足や技術継承、生産性の低さなど、建設業界が抱える課題は数多くあります。このような背景のなか、今後も成長を続け、競争優位性を確率するためには、建設DXの実現が必要不可欠です。
AIやloT、ドローンなどのデジタル技術は、建設業界の課題を解決する大きな助けとなります。デジタル技術を戦略的に活用しながら、建設DXを推進しましょう。
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