自治体DXとは、デジタル技術を活用し行政サービスを変革していくことです。少子高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大などにより、自治体DXに対する関心が高まっていますがまだまだ推進には至っていない状況です。
この記事では自治体DXの概要や必要な背景、政府が掲げる6つの重要な取り組みや自治体DXの課題、既に自治体DXに取り組んでいる各都道府県の実践事例などに関して詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
自治体DXとは
自治体DXとは、最新のデジタル技術を活用することで自治体が抱える問題点や課題を解決し、住民に提供するサービスを変革させていくことです。総務省は2020年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を決定し、民間企業だけではなく各自治体もDXを推進することで多様な幸せが実現できる社会を目指していくというビジョンを提示しました。国民のよりよい生活のために、自治体DXを推進していくことが求められています。
企業が行うDXは自社の利益を向上させるための変革であるのに対し、自治体DXは住民のための変革であるというというのが大きく異なる点です。
下記の記事でDXの概要について詳しく説明されています。参考にしてみてください。
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自治体DXが必要な理由・背景
自治体DXが必要な理由や背景には、少子高齢化や2025年の崖、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。現在、日本全体が抱えるこれら3つの問題は自治体DXとどのように関連しているのでしょうか。詳しく解説します。
少子高齢化
自治体DXが必要になった背景の一番の要因に、少子高齢化による人口減少が挙げられます。高齢者が増加する一方、労働力のある世代の人口減少が進行することで社会インフラや公共交通サービスの品質維持や提供自体が困難になる可能性が高まるでしょう。
デジタル技術を活用し、住民1人1人に対して安定した行政サービスが提供できるよう自治体DXを推進することが急務です。
2025年の崖
経済産業省が2018年に掲げたDXレポートの中で、2018年当時のままDXが進まない状況が続いた場合、2025年にはDX推進遅延による経済損失が年間で12兆円に達すると発表しました。この経済的リスクを「2025年の崖」と名付け、警鐘を鳴らしています。これは日本経済全般にいえることですが、自治体も例外ではありません。自治体も含めた日本全体でDXを進めていく必要があります。
2025年の崖については、次の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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「2025年の崖」とは?DXレポートの内容にあわせて克服の方法を紹介
新型コロナウイルスの感染拡大
新型コロナウイルスの感染拡大により、行政サービスに業務効率と衛生面との両立を図るためにはデジタル技術を活用しシステム刷新を行うことが最善であると証明されました。行政手続きのオンライン化や、リモート業務を推進することで感染リスクを回避し住民の健康を守るだけではなく、業務効率化にも繋がるでしょう。
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政府が掲げる自治体の6つの重点取組事項
2020年、総務省は地方自治体が自治体DXに取り組む際の重点事項をまとめた「自治体DX推進計画」を発表しました。
総務省|報道資料|「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の策定
自治体の情報システムの標準化や共通化、マイナンバーカードの普及促進など6つの項目に分けられています。それぞれの項目について詳しく解説します。
自治体の情報システムの標準化・共通化
まず、自治体が取り組むべきことは情報システムを標準化することです。現在、システム構築は各自治体に任されており、導入しているシステムのばらつきから各自治体間はおろか同一自治体間でも連携が行えていないケースが多くみられています。
これらの問題を解決すべく2025年度中に主要17業務をガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行し、行政サービスや自動化を大きく推進していくことが目標です。
マイナンバーカードの普及促進
マイナンバーカードは住民の個人情報管理を一元化するもので、2022年度末までには国民のほとんどがマイナンバーカードを保有することを目標に国は各推進施策を進めてきました。マイナンバーカードはデジタル社会の基盤となるものです。マイナンバーカードが普及することで、納税や行政サービスを受ける際の手続きが簡便になり、サービスの品質向上に繋がるでしょう。
自治体の行政手続きのオンライン化
行政手続きのオンライン化を図ることで住民の負担を軽減することに繋がります。そこで、マイナンバーカードを使用しマイナポータルからオンライン手続きが行えるよう、国と自治体との接続機能の開発などを進めてきました。児童手当の請求や要介護認定の申請など、子育てや介護関係を含めた31項目の手続きがオンライン上で可能になります。
自治体のAI・RPAの利用推進
人工知能(AI)や自動化システム(RPA)を導入することで、自治体職員の業務効率化を図ることを目的としています。今後直面する少子高齢化による人材不足を補うには、定型業務はAIやRPAなどの機械に任せ、職員はヒトにしかできない業務に注力することで現場の負担を減らす仕組み作りが重要になるでしょう。
テレワークの推進
自治体職員が、職場以外の場所から業務を遂行できるテレワーク環境の整備も推進されています。テレワークが整備されれば、育児や介護などで仕事との両立が難しい場合でも活躍の場が広がる可能性が高まるでしょう。総務省は「テレワーク導入円滑化のためのセキュリティポリシーガイドライン」を改定し、テレワーク導入事例などを提供しています。
セキュリティ対策の徹底
行政手続きのオンライン化やテレワークの推進などデジタル化を安全に進めるためには、セキュリティ対策の徹底も重要です。総務省は「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を作成し、自治体のセキュリティ対策を支援することとしています。セキュリティ対策は、システム改善と同時に進めるべき重要な取り組みの1つです。
地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン
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自治体DXの実現に必要な4つの取り組み
自治体DXの実現には、次の4つのポイントに沿って取り組んでいくことが重要です。必要な取り組みについて解説します。
組織体制の整備
自治体DXを進めていくことは組織全体に影響を与えることになります。そのため、まずは自治体DXの必要性などを理解し組織体制を整えていくことが重要です。横断的にDXを進められるよう全庁的なマネジメント体制を整えることが望ましいでしょう。
デジタル人材の確保・育成
自治体DXの推進には、デジタル人材の確保や育成も重要不可欠です。しかし、デジタル人材は一般企業からも求められており、確保をすることは困難を極めます。国が提供する「デジタル専門人材派遣制度」を利用したり、各自治体で独自に人材を育成するなど人材を内部で確保する努力も必要になるでしょう。
計画的な取り組み
自治体DXの取り組みは効果が表れるまでに時間を要します。そのため、工程表を作成するなどし長期的な目線で段階的に進めていかなければなりません。総務省が2021年に公開した「自治体DX全体手順書」や先行事例を参考にしながら取り組んでいくとよいでしょう。
都道府県による市区町村支援
市区町村における自治体DXの一連の施策を着実に進めていくためには、都道府県が支援を行っていくことが必要です。具体的には、方針の作成やデジタル技術の共同購入、人材確保などのさまざまなサポートを行っていけるとよいでしょう。
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自治体DX実現における課題
DX人材不足やアナログ文化が根強く残っている状況下にいることなど、自治体DXの実現にはまだまだ課題が残されています。課題点について、詳しく解説します。
DX人材の不足
自治体DXを実現するうえで、最も大きい課題としてDX人材の不足が挙げられます。組織内でDXの重要性が共有できていたとしても、実行に移すための人材が確保できていないというのが実情です。外部からの人材確保はもちろん、自治体内でDX人材を育成する環境整備が必要でしょう。
根強く残るアナログ文化からの脱却
自治体の多くは、ハンコや紙を使用した手続きを行っておりデジタル化が未だに浸透していないのが現状です。アナログ文化から脱却するためにも、DXの必要性の共有や推進手順の確認などデジタル化への意識向上に繋げていくことが重要になるでしょう。
市民と行政のコミュニケーション不足
市民と行政とのコミュニケーション不足が、自治体DXの推進に遅れをとる要因の1つになっていることも否定はできません。マイナンバーカードのように、自治体DXは行政が市民の情報を用いてさまざまなサービスを行っていくものです。自治体DXを推し進めるのであれば、市民の理解が深まるよう対話を行っていくことが重要になるでしょう。
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自治体DXの取り組み例
自治体DXに取り組む際、どのようなデジタル技術が活用されているのでしょうか。5つの例を挙げて、具体的に解説していきます。
AIチャットボット
AIチャットボットとは、リアルタイムに自動で短文の会話を行うことができるチャットボットにAIが搭載されたものです。AIチャットボットを導入した自治体では、日中なかなか役所を利用できない住民がいつでも問い合わせができる体制構築を図ることが可能となりました。
電子申請
電子申請とは、従来紙で行ってきた行政手続きをパソコンやスマートフォンなどからインターネット経由で行う方法のことです。行政手続きを電子化した自治体は、幅広い手続きの電子化に成功するなど住民の利便性向上のためさまざまな取り組みを行っています。
地域通貨
地域通貨とは、定められた地域やコミュニティ内でのみ使用でき、法定通貨と同じ価値を持つお金の事です。地域内の商店などで利用されるため、地域の経済活性化だけではなく地域コミュニティ活性化の役割も果たすことが期待できるでしょう。
RPA
RPAとはRobotic Process Automationの略称で、日々の定型業務をロボットに任せ自動化し効率化を図ることです。行政内の人手不足を解消できる効果が期待でき、総務省も2018年からRPA導入支援を予算化し推し進めています。実際にRPAを導入したことで年間の時間外労働時間の削減を実現できたという事例も聞かれています。
オープンデータ活用
オープンデータとは二次利用が可能な公開データのことで、人手や費用などのコストをかけずに誰でも利用できるものです。例えば、子育て中の親が知りたい情報がポータルサイト上に掲載されており、保育園の空き状況や近くの公園などを確認できるサービスを提供している自治体もあります。
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各都道府県における自治体DXの実践事例
各都道府県において、自治体DXを推進するべく体制構築を行っていたり、デジタル技術を活用し行政サービスの向上を図っている自治体があります。具体的な実践事例について解説します。
自治体DXはなぜ必要?政府のDX推進計画や各地の推進事例を紹介|SE Design
三重県
三重県では令和3年に、全国初とされる民間公募による常勤の最高デジタル責任者が運営する「デジタル社会推進局」を立ち上げました。社会におけるDXと行政DXとの両面を横断的に実行し、デジタル社会の実現に向けた取り組みを実践しています。
デジタル社会推進局では、全国初のDXワンストップ相談窓口である「みえDXセンター」を開設するなど、三重県内の市区町村が自治体DXの第1歩を踏み出すことに貢献しています。
福島県
福島県会津若松市では、2018年に「LINE」を使用したAI自動応答サービスを導入しました。役所が対応できない土日や夜間帯でも問い合わせが可能となり、市民アンケートでは8割以上の方が利便性の向上を実感しているとの声が寄せられたとのことです。
2021年には「スマートシティ推進室」を立ち上げ、自動応答サービス導入以降、積極的なデジタル化を進めています。
なぜ今自治体のDX化が必要なのか?基礎知識や取り組み事例を解説【自治体事例の教科書】|自治体通信Online
宮城県
宮城県仙台市では、スピード感のある対応を実現するための「デジタル化ファストチャレンジ」を実施中です。窓口業務のデジタル化など3つを柱にしたもので、押印の廃止やモバイル端末を使用した市民対応などさまざまな取り組みが行われています。
また、「仙台市DX推進計画」を策定し、「行政のデジタル化」と「まちのデジタル化」を進めさまざまな住民のニーズに応える自治体DXの実現を目指しています。
自治体におけるDX実施の現状を総まとめ!課題や事例を紹介|デジタルトランスフォーメーション チャンネル
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まとめ
自治体DXの推進は、行政サービスの品質向上を図ることで利便性を向上しその土地に住む住民が暮らしやすい街づくりへ貢献することが期待できます。各都道府県の事例を参考にしながら、自治体DXの第1歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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