ITサービスを運用していると、システムのアップグレードや担当者の調整など、さまざまな場面で変更の必要が生じます。
1つの変更が発生すると、他の業務や予定にも影響を与える場合が少なくありません。また、大幅な変更があった場合や、変更の影響が複数部署にまたがる際は、事態が複雑化する場合もあります。
迅速に間違いなく対応するためには、適切な変更管理を行うことが重要です。今回は、変更管理の目的について解説し、変更管理を行うメリットや、活用の場面を紹介します。
変更管理とは?
変更管理とは、変更ログを作成してシステムなどの変更を管理する事です。何をどのように変えたのか、情報や履歴を残しながら変更管理していくので、変更したことについて追跡できるようになります。
また、あらかじめ変更管理の手順や承認担当者を定めておけば、急を要する変更があったときにもスムーズに対応できて便利です。
変更管理の実施は、適正に行わなければ大きな混乱を招きます。変更管理の種類や目的について理解し、プロセスや活用法をしっかり学んでおくことが重要です。
正しく行うことができれば、大きなメリットが得られます。順を追って解説いたします。
変更管理における主な変更の種類
変更管理において変更を行う対象は、ハードウェア、ソフトウェア、人の場合に分けられます。それぞれの具体例や、注意点をみていきましょう。
ハードウェアの変更
1つ目は、ハードウェアの変更です。具体的には、サーバーの増設やOSの変更などを指します。従業員の増員でハードウェアを買い足した場合なども該当します。追加する場合だけでなく、修理や廃棄を行った場合も変更管理が必要です。
ソフトウェアの変更
2つ目は、ソフトウェアの変更です。新しいソフトウェアを導入する場合や、既存のソフトウェアに追加で改修を行う場合を指します。ハードウェアと同様に、廃棄を行った場合も含みます。アップデートのスケジュール変更や、セキュリティパッチの適用といった細かい箇所も変更管理しておきましょう。
人の変更
3つ目は、人の変更です。担当者の変更だけでなく、マニュアルや業務プロセスの変更管理も含みます。担当した従業員を記録するとともに、業務プロセスを変更した時や、マニュアルの更新や廃止があった場合は、忘れず変更管理をして記録を残しておきましょう。
変更管理とリリース管理の違い
変更管理と混同されがちな管理の1つに、リリース管理というものがあります。
リリース管理とは、ITシステムの本番環境への変更を管理するものです。リリース管理は、ITサービスの品質を保つことを目的として、加える変更をコントロールします。一般的に、変更管理のフローで承認を得た後に、変更することを前提として行うものです。
一方、変更管理はすべての変更を対象に、変更の追跡が可能になるように管理するものです。本当に変更が必要かといったことの確認や、変更時期の調整なども行います。変更によって引き起こるリスクを小さくするということを目的に管理しているので、リリース管理とは管理対象や目的が異なります。
いずれも重要な管理ですので、違いや目的を理解し、適切に行っていきましょう。
変更管理とチェンジマネジメントの違い
チェンジマネジメントとは、新しいプロセスを導入する際に、チームや組織の混乱を防ぎ、ペースを乱さないように管理していく手法の全体を指すものです。すなわち、変更管理はチェンジマネジメントの1つの要素として位置づけられます。
チェンジマネジメントは、変更や新規の導入があった場合について、スケジュールや予算、リソース、コミュニケーションに関する事柄まで含めて、さまざまな影響をマネジメントします。変更管理を含めて、プロセスを取りまとめる全体計画がチェンジマネジメントであると考えればわかりやすいでしょう。
チェンジマネジメントをスムーズに行うためにも、各箇所の変更管理を適切に行って、変更によって不都合が起きないように調整していくことが重要です。
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変更管理の目的
変更管理の目的は、変更によって引き起こるリスクを最小限に抑えることです。変更管理は、大きく分けて2つの役割を果たします。
1つ目は、変更履歴を残すという役割です。変更箇所について情報を記録しておくことで、トラブルがあった場合に追跡することが可能になります。
2つ目は、変更した際にITサービスなどの停止時間を最小限にする役割です。変更による影響範囲の把握に加え、担当者や指揮系統、リカバリ計画なども整理しておくことで、万が一の事態が発生しても、迅速に対応できます。
小さなことでも変更を行うと、混乱や手違いが起きやすいものです。変更管理を行っていれば、トラブル発生時も影響が拡大しないように対処することができます。引き起こるリスクを最小限に抑えるために、変更管理を適切に行いましょう。
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変更管理のメリット
変更管理はリスクを抑えるために行いますが、生産性やチーム連携の面でもよい効果があるものです。変更管理を行うことで得られるメリットを紹介します。
仕事の生産性向上
変更管理の実施は、仕事の生産性向上に効果があります。変更に伴ってミスや混乱が起きてしまうと、本来するべき業務が停滞してしまうでしょう。変更管理を適切に行えば手違いの発生を抑えられ、万が一トラブルが発生しても迅速に対処できます。スムーズに仕事を行えるので、生産性向上につながるのです。
チームのコミュニケーションが円滑になる
変更管理を行って適切な記録を取るようにすると、コミュニケーションの面でもメリットが得られます。目的や目標を明確にして共有できるので、コミュニケーションが取りやすくなります。認識のすれ違いによって起きるようなミスも、減らすことができるでしょう。チームのコミュニケーションを円滑なものにするといった点でも、変更管理は重要な役割を果たすのです。
チームの連携の改善
円滑なコミュニケーションを取れるようになることに加え、チーム連携も改善します。変更管理で変更点や必要性を明確にしておけば、チームメンバーと的確に共有ができるので、スムーズに連携できるのです。さらなる改善点について議論するような場合も、手際よくすすめることで時間を有意義に使い、メンバーの創造性や創意工夫を引き出すことができるでしょう。変更管理はチームの連携や協力体制を整えるためにも役立つのです。
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変更管理のプロセス
変更管理を行う手順として、一般的に5つの工程が必要です。変更管理をスムーズに進めるためのプロセスを順に解説します。
変更要求
まず、どのような変更を行いたいのか、本当に必要な変更なのかといった確認を行います。変更に伴う効果やリスクだけでなく、変更しなかった場合に起こり得る影響も考慮し、検討しましょう。提案者や責任者についても記録に残しておきます。
計画
緊急度や影響範囲を考慮しながら、具体的な計画を立てていきます。スケジュールやリソース、トラブル発生時の対処方法も詳細に決めていきましょう。サービスの停止期間に必要な対応も考えなければなりません。
また、技術面の観点からだけでなく、ビジネス面や業務面で支障が起きないかといった確認も必要です。変更が与える影響を広い視野で捉えて計画を立てて行きましょう。
承認
計画した変更を実行すると判断し、承認する工程です。承認においては、予算や技術の面で可能かといった点や、利用者への不適切な影響がないかということも判断材料として評価します。
承認者を誰にするかということや判断基準は、変更のレベルや種類によって異なるでしょう。あらかじめ定めておくことが必要です。
構築・レビュー
承認された変更を実装し、構築します。変更を施した後は、必ずレビューを行って予想していた効果が得られているかを検証しましょう。
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変更管理プロセスを活用すべき場面
変更管理のプロセスをまとめておけば、定型的で頻繁に行われるような変更は手順を省いて効率化する、といった対応も検討できます。変更管理について、活用すべき場面を3つのタイプに分けて解説し、効果的な活用方法を紹介します。
通常変更
変更管理の手順通りに行う変更です。定義した変更プロセスに沿って変更要求・計画・承認・構築・レビューの作業を進めます。
標準変更
定期的に繰り返し行われるような変更は、標準変更として位置づけておくとよいでしょう。
具体例としては、ルーターの交換や、ハードウェアのストレージ追加などといった変更が該当します。
引き起こるリスクが低い定型の変更なら、計画や承認といった工程を毎回行う必要がありません。変更手順のドキュメント化や、承認された状態にしておくなどの工夫をすることで、プロセスの省略が可能になります。変更管理の通常の手順から、一部を省略した変更モデルを定義しておき、効率的に変更を行いましょう。
緊急変更
予測されていなかった、急を要する変更は、緊急変更として迅速に対応しなければなりません。例としては、セキュリティが危険にさらされた場合の急なパッチ適用や、重大なトラブルを解決するための対策といったものがあるでしょう。
緊急変更はできるだけ発生させないことが重要ですが、変更管理プロセスを整えて手順や承認担当者をあらかじめ定めていれば、リスクを最小限に抑えて対応することができます。
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まとめ
変更管理を適切に行うことで、混乱なく迅速な変更が可能になり、変更によって引き起こるリスクを抑えることができます。生産性向上やチームの連携にも役立つので、変更管理のプロセスをしっかり整えて活用しましょう。
しかし、変更管理のプロセスを整えるためには、さまざまな作業が必要になり、わずらわしさを感じることがあるかもしれません。社内での整備に困難を感じた場合は、『J’s X(ジェイズクロス)』の導入を検討してみてはいかがでしょうか。『J’s X』は、あらゆる業務プロセスをシンプルにする、業務標準化のクラウド型ソリューションサービスです。貴社に合ったスムーズな変更管理プロセスをご提案いたします。ぜひ『J’s X(ジェイズクロス)』にご相談ください。