近年、自然災害やサイバー攻撃の増加、感染症の拡大などにより、サプライチェーンリスクは、企業にとって無視できないものになってきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大による世界の混乱は記憶に新しいですが、サプライチェーンが複雑化し、グローバル化してきている昨今、サプライチェーンリスクマネジメントの重要性も増してきています。
この記事では、サプライチェーンリスクマネジメントとは何かという解説だけでなく、リスクを軽減するための対策や手順についても紹介していきます。サプライチェーンリスクマネジメントについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
サプライチェーンのリスクとは?
サプライチェーンのリスクについて学ぶ前に、まずは「サプライチェーンとは何か」ということについて説明します。
「サプライチェーン」は日本語に訳すと「供給連鎖」で、商品やサービスの企画・開発から生産を経て、販売され、消費者に届くまでの一連のプロセスのことです。この一連のプロセスを構成する企業の集団を指して、サプライチェーンということもあります。
このような一連のプロセス(サプライチェーン)が滞ったり寸断されて、供給の流れが止まってしまうようなリスクが、「サプライチェーンリスク」です。
わかりやすい例では、自然災害によって物流が止まってしまったり、工場が稼働できない状態になってしまうようなことが挙げられます。ほかにも、テロやパンデミック、経済危機、システム障害、サイバー攻撃などもサプライチェーンにとっての大きなリスクとなりうるものです。
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サプライチェーンリスクの発生が企業に与える影響
サプライチェーンリスクの発生は、企業に大きな影響を与えます。直接的な影響としては、商品の供給が滞ってしまうことによる販売機会の喪失や、復旧のためのコストなどがあります。復旧ができない場合には、事業の縮小や停止も検討しなければいけないかもしれません。
また、商品の供給が遅延したり、サプライチェーンリスクへの対策を十分にしていなかったということになれば、企業全体のイメージダウンにも繋がりかねません。その結果、顧客離れや株価の下落、優秀な人材の流出、採用活動が難しくなるなどの間接的な影響が出ることも考えられます。
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サプライチェーンリスク軽減に向けた対策
企業に大きな影響を与えかねないサプライチェーンリスクを軽減するためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、その対策を3つ紹介します。
BCP(事業継続計画)の策定
1つ目の対策は、BCP(事業継続計画)の策定です。BCPとは、自然災害や事故などのリスクが発生した場合を想定した、事業を継続させるための対応計画のことです。
BCPを事前に策定しておくことで、サプライチェーンリスクが発生してしまった際にも、被害を最小限に抑えることや速やかな復旧が可能になり、事業を継続できる可能性が高まります。
調達先や拠点を複数にすることによるリスクの分散
2つ目の対策は、調達先や拠点を複数持ち、リスクを分散することです。自然災害などが起こると、特定の場所からの供給が途絶えてしまう可能性があります。それを回避するためには、複数の調達先や拠点を持っておくことが有効です。
国外にも拠点がある場合には、特定の国だけに集中させるのではなく、複数の国に拠点を分散させたり、国内の拠点でも対応できるようにしておくとよいでしょう。
サプライヤとの連携強化
3つ目の対策は、サプライヤとの連携を強化することです。サプライヤとは供給元・仕入れ先のことですが、そのサプライヤとの連携を強化することは、情報収集を容易にし、リスクの見極めにも役に立ちます。
類似部品を製造できるサプライヤを事前に調べておけば、リスク発生時にも、納期などへの影響を少なくすることができるでしょう。
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サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)とは
サプライチェーンリスクマネジメントとは、サプライチェーンにおけるリスクを管理することで、問題の発生を防ごうとする取り組みです。英語の「Supply Chain Risk Management」の頭文字を取って、「SCRM」という略称が使われることもあります。
近年は、自然災害だけでなく、パンデミックや国際情勢の緊迫化などにより、サプライチェーンも不安定さを増しています。これらのリスクによって生じるトラブルを事前に予想して、対策をしておくことが重要です。
特に最近では、サプライチェーンのIT分野でのリスクも高まっており、従来のリスク管理に加え、サイバー攻撃や情報流出などの情報セキュリティリスクの管理も重視されるようになってきています。
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サプライチェーンリスクマネジメントが必要となっている理由・背景
急速なグローバル化の影響もあり、サプライチェーンの複雑化に伴って、企業にとってのサプライチェーンリスクマネジメントの必要性が増してきています。
ここでは、その理由や背景について、もう少し詳しく説明します。
市場・製品の多様化
市場の成熟と、消費者のニーズの変化にあわせた製品の多様化も、サプライチェーンリスクマネジメントが必要となっている背景の1つです。
近年、消費者のニーズが多様化する中で、生産形態も大量生産から多品種少量生産を主流とする形態へと変化しました。その結果、取引相手が増えたり、管理が複雑になったりして、サプライチェーンリスクが大きくなり、これらに対するリスクマネジメントの必要性も高まっているのです。
自然災害
地震などの災害だけでなく、最近は台風や大雨による洪水など、異常気象によって引き起こされるサプライチェーンリスクも増大しています。
これらの自然災害により、サプライチェーン内の企業や拠点の生産・物流体制が止まってしまう可能性も想定しておかなければなりません。物流の寸断や、製造工場などへの直接的な被害、停電で稼働できなくなるといったリスクを軽減するための、リスク管理が重要です。
新型コロナウイルス感染症の拡大
世界中で感染が拡大した新型コロナウイルス感染症は、企業の生産活動に大きな影響をもたらし、世界経済は急速に冷え込みました。このように、従来の自然災害などとは異なり、世界規模での大きな影響が長期的に出てしまうことが、新型ウイルスの感染拡大によるリスクの特徴です。
渡航や外出が制限され、生産活動や物流が停滞したため、海外に展開する企業の中には、調達や生産拠点の見直しをせまられる企業もありました。
多くの企業では、この経験をふまえ、中長期的な世界規模の危機に備えるためにBCP(事業継続計画)の再検討が必要となっています。
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サプライチェーンリスクマネジメントの手順・ポイント
ここまで、サプライチェーンリスクマネジメントの重要性について解説してきましたが、実際にサプライチェーンリスクマネジメントを行うためには、さまざまなポイントがあります。手順とともに見ていきましょう。
サプライチェーンリスクマネジメントの手順
サプライチェーンリスクマネジメントを実施する際は、次のような流れで行うとよいでしょう。
1.サプライチェーンの構造を可視化する
2.サプライチェーンリスクを抽出し、評価する
3.対策を決定し、実行する
4.サプライチェーンリスクに対する監視を行う
サプライチェーンリスクマネジメントを行うには、まず、サプライチェーンの構成要素を把握し、それらがどのように繋がっているのかを整理する必要があります。直接取引のある一次サプライヤだけでなく、その先の二次以降のサプライヤについても、できるだけ情報収集をしておきましょう。
次に、先ほど整理したサプライチェーンをもとに、途絶を起こしうるリスクを抽出し、評価を行います。リスクの評価は、リスクマトリクスなどを用いて、リスクの「発生確率」と「事業への影響度」という観点で評価するのが一般的です。
リスクの評価が終わったら、そのリスクを軽減したり回避することができるように、対策を検討します。抽出した全てのリスクに対応することは難しいので、対策に必要となるコストや影響度をふまえて、実施範囲を決め、対策を行いましょう。
ただし、一度対策を決めたら、それで終わりというわけではありません。サプライチェーンの構造が変化するのに伴って、リスクの種類や優先度も変化していきます。これらのリスクの変化を監視し、必要に応じてアップデートしていくことが大切です。
サプライチェーンリスクマネジメントのポイント
サプライチェーンリスクマネジメントのポイントは、自社だけを対象にするのでは、不十分だということです。サプライチェーンで繋がっている企業や従業員、システムなど全てを対象として、リスクマネジメントを考えていく必要があります。
特に、近年、急速に重要性が高まっているIT分野での情報セキュリティリスクのマネジメントにおいては、サプライチェーンの中でも最も弱い部分に注目しなければなりません。どんなに自社のセキュリティ強度を高めても、委託先の1社の対策が不十分であれば、サプライチェーン全体でのセキュリティ強度も弱まってしまうので、注意してください。
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まとめ
従来のリスクに加え、情報セュリティ上のリスクや世界情勢の悪化が懸念されるようになり、サプライチェーンリスクマネジメントの重要性は、今後ますます高まってくるはずです。
しかし、複雑化したサプライチェーンについて、リスクを適切に分析することは、容易ではありません。どこから手をつけていいかわからないという場合もあるでしょう。そのような時は、ITツールの導入を検討するのもおすすめです。
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