導入事例

【導入事例】三井倉庫ホールディングス株式会社様

情報システム部のDXにServiceNowを導入。グループ会社全体のIDや機器に関する申請・管理、アプリケーション開発プロセスの管理を効率化

 「物流」を通じて100年以上にわたり社会と生活を支えてきた総合物流パートナー「三井倉庫グループ」。激変する社会情勢の中で、社会や顧客に対して安定的なサプライチェーンを提供するために、同社グループではDXに関する取り組みを推進している。その中で、情報システム部の業務のデジタル化のために導入したのが、「ServiceNow」であり、その導入を支援したのがJSOLだった。

課題・解決・効果

現場のデジタル化を推進する一方、遅れていた情報システム部の改革

 「社会を止めない。進化をつなぐ。」というパーパスのもと、多様化する社会や顧客のニーズに物流サービスの提供を通じて応え続ける三井倉庫グループ。三井倉庫ホールディングス情報システム部 部長の森田哲二氏は、自社の強みについて、「100年を超える歴史の中で育んできた、お客さまとの信頼関係」を挙げ、「M&Aを通して事業を拡大させてきた結果、『多様な専門性を持った企業集団』として、幅広いお客さまへ業種特性に応じた対応が可能になったと感じています」と続ける。
 森田氏が率いる情報システム部は、数多くあるグループ各社のITインフラや、ユーザーID、端末機器などを一元管理している。また、在庫管理や輸配送、輸出入フォワーディングといった物流業務に必要なアプリケーションの開発、運用も長年行っている。
 その一方で「現場の改善を優先した結果、情報システム部自身のデジタル化が遅れていた」ことを問題点として挙げた。
 「私たち情報システム部門の直接の役割は、物流現場で働くグループ各社のユーザーにITサービスを提供すること。しかし、その先には当社の物流サービスを利用するお客さまがいらっしゃいます。情報システムが変われば、現場の仕事もさらに効率化され、最終的にはお客さまへのサービス向上にもつながります」(森田氏)

左)三井倉庫ホールディングス株式会社 情報システム部 部長 森田 哲二氏
中)三井倉庫ホールディングス株式会社 情報システム部 管理課 課長 笹本 等氏
右)三井倉庫ホールディングス株式会社 情報システム部 システム第1課 課長 小林 祐博氏

「機能を拡張しやすい管理システム」してServiceNowに着目。情報システム部のDXへの第1歩

 従来の各種申請は、現場部門で必要な情報を入力した書類を印刷し、上長の押印をもらった上でPDFに変換し、メールで情報システム部に送信していた。情報システム部 管理課 課長の笹本等氏は「IDや機器については毎月500~800件程度申請があります。ただExcelフォームで自由度が高い反面、記入ミスや記入漏れが起こりやすく、確認作業や不備があった場合の対処などに時間を要し、他の業務が圧迫されることもありました」と当時の課題を挙げる。
 また、アプリケーションの開発においては、常時20~30のプロジェクトが並行して動いており、その進捗管理にはプロジェクト管理ツールを用いていた。情報システム部 システム第1課 課長の小林祐博氏は「開発の進捗状況は各担当者が管理ツールに日々入力していましたが、工数やプロセスの把握に課題がありました。例えば、誰がどの機能の開発をどこまで進めたかは把握できても、課別・案件グループ別の状況はExcelで集計しなければならず、そもそも工数の入力頻度や精度が個人でばらつきがあり、正確でタイムリーな状況把握に課題がありました」と語る。
 こうした課題を解消し、情報システム部の業務をより確実に効率よく進めるためのツールの導入を検討していた際に候補に挙がったのが「ServiceNow」だった。ServiceNowは、企業が活用している多種多様なITサービスを効率よく活用、連携するためのプラットフォームである。
 ServiceNowに関心を持つきっかけについて、「あるお客さまとの新規プロジェクトの立上げに際して、インシデント管理に活用したいと相談を受けたこと」だったと説明する。それまで利用していた管理ツールが工程管理などの機能に限定されていたのに対し、ServiceNowは「IDや機器の申請、インシデント管理、ヘルプデスクなど、機能が充実している点に魅力を感じた」という。そのような折り、タイミングよくJSOLからServiceNowの提案を受けた。そして2022年5月に採用を決定、導入プロジェクトが動き出した。

課題解決への道筋を提示するJSOLの「提案力」と「実行力」を評価

 森田氏はJSOLからの提案を「単純にServiceNowを導入しましょうという『ツールありきの提案』ではなく、当社における現状の課題や今後目指す姿や業務変革まで意識して提案してくれた」と高く評価する。JSOLは、数段階のステップに分け、ステップ1では「IDや機器の申請」、ステップ2では「開発プロジェクト管理」というように、現状の課題に焦点を当てつつ、将来的な発展を見据えた提案を行った。
 導入に当たっては「Fit to Standard」を目指した。これは業務に合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、システムの標準機能に業務を合わせていこうという取り組みだ。構築も比較的短期間で終えられるほか、長期にわたっての利用となる中でメンテンスが容易であるなどのメリットがある。
 ステップ1の申請業務においては、ServiceNowの「IT Service Management(ITSM)」を導入した。
 「もともと紙とメールでの運用に、ユーザーも不便さを感じていましたので、最初は戸惑いがあったものの、『ServiceNowのフローに変えよう』という改革は、比較的スムーズに浸透したように感じます」(笹本氏)
 申請フォームは、ユーザーに受け入れやすいよう、従来のフォームを踏襲しつつも、記入ミスや記入漏れによる手戻りを無くすよう、JSOLと意見を交えながら、ユーザー目線で工夫し、無駄な作業を低減させた。
 ステップ2の開発管理では、ServiceNow の「Strategic Portfolio Management(SPM)」機能を導入した。
 「一部で独自機能を開発しましたが、ほぼSPMの標準機能のままで利用しています。利用するのが情報システム部でしたから新たなサービスの飲み込みも早く、『Fit to Standard』を目指す意義も理解していました」(小林氏)
 森田氏は、さまざまなやりとりを通して、「寄り添う形で提案するスタンス」にJSOLの魅力を感じたという。
 「JSOLは、『これから高みを目指して改革を進めていく、その第1歩がServiceNowです』と道筋を示してくれました。導入時も、ServiceNowに関する高いスキルや豊富な知見を持ったメンバーをアサインしてくれたので、安心して任せられました」(森田氏)

情報システム部のデジタル化に成功。申請や開発工程の進捗を一元管理。

 ステップ1は2022年11月、ステップ2は2023年4月に稼働を始めた。ステップ1で稼働を開始した「IDや機器の申請」では紙の書類をなくし、全てServiceNowのポータル画面上で登録申請をするフローに変わった。
 「当社だけでは無いと思うのですが、コロナ禍において在宅ワークが浸透し、紙と印鑑の世界ですと、押印を取り付けるのに非常に苦労するケースが出てきました。ServiceNowにしてからは、どこにいても申請できるので、ユーザーの余計なストレスがなくなりましたし、起票から作業完了までの処理スピードが上がり、リードタイムも短縮されました。
 また、メール申請の時は、作業の進捗が見える化されていませんでしたので、逐一ユーザーからメールで問い合わせが入り、回答していましたが、ServiceNow移行後はポータル画面上で進捗確認ができるようになったので、この点でもユーザーのストレスは大きく減ったと思います」(笹本氏)
 
 ステップ2の「開発プロジェクト管理」では、情報システム部と開発委託会社のメンバーが工数の予実管理、承認プロセス、ドキュメントの管理などにServiceNowを利用している。これによって管理者側の工数と手間が減った点を、小林氏は「プロジェクトの管理者にとっても、メンバーにとっても負担が軽減されました。メンバーは日々入力するのが基本ですが、一週間同じタスクが続くような場合は纏めて一度に入力することができ画面展開の手間が省略できました」と高く評価した。
 さらに、新規プロジェクトの準備も進めやすくなったという。
 「メンバー一人ひとりの作業負荷や全体の進捗状況がダッシュボードで把握しやすくなったので、『新しいプロジェクトが動き出すときに、誰をアサインしよう』という場合でも検討がしやすくなりました。いろいろな切り口で自由に状況を確認できるのはServiceNowの便利な点です」(森田氏)

情報システム部が起点となって物流現場が変わるDXの形

 ステップ1、2と続けてきたプロジェクトだが、この先の検討もJSOLと共に始めている。
 「今回ServiceNowを導入して「IDや機器の申請」の改善を実現できましたが、次のステップとして、IT機器の管理をServiceNow上で行うようにできればと考えています。現状、機器管理は別のツールを使用していますが、申請から機器管理へとデータ連携し一元的に管理することで、管理精度や効率アップにつなげられると考えています。ServiceNowというツールはITサポート全般において利用できる、広がりを持ったツールだと感じています」(笹本氏)

 「今回のプロジェクトは、情報システム部が変わることで現場も変わっていくという形で広がっていきました。これもDXの形です。当社では『共創』を大切に考えていますので、ゴールを目指して共に歩んでいける関係を築けたJSOLとは、今後も広く協力していければと期待しています」(森田氏)

左から、JSOL 須賀 亮介、三井倉庫ホールディングス株式会社 森田 哲二氏、笹本 等氏、小林 祐博氏、JSOL 中神 祥文

企業情報

会社名三井倉庫ホールディングス株式会社
所在地〒105-0003 東京都港区西新橋3丁目20番1号
設立1909年(明治42年)10月11日
事業内容グループの経営戦略策定および経営管理、不動産事業
WEBサイトhttps://www.mitsui-soko.com/