セキュリティ対策と子育て支援|システム化における2つのトレンドを紹介
ーーまずは須賀さんの現在のお仕事を簡単にご紹介いただけますか?
私はServiceNowの開発・導入マネージャーとして約4年間務めており、現在は約70名のメンバーと一緒に仕事をしています。お客様への提案から携わることが多く、受注できた場合はそのままプロジェクトマネージャーやプロジェクト責任者として案件に入ることが多いです。現在もServiceNowの導入案件に取り組んでいます。
ーーありがとうございます。現在取り組んでいらっしゃる案件はどのような内容でしょうか?
現在はとある都道府県で働く人々のセキュリティインシデントを管理するシステムの構築に取り組んでいます。このプロジェクトは12月に開発がスタートし、3月までの約4ヶ月で開発を完了。4月からシステムの運用が始まっています。
セキュリティインシデントには、軽度のものであればウイルスチェックにかかったファイルの処理やメールの誤送信、重大なものなら個人情報の流出など、大小さまざまなものがあります。このようなインシデントを管理する部署があり、都道府県の各職員からインシデントの発生や対応状況の報告を受けるためのシステムです。
これまではメールや電話で受けた報告をExcelで管理していましたが、電子化してシステムで一元的に管理することで、効率化と正確性の向上を図っています。
ーーお客様からシステム導入の依頼を受けるにあたって、お客様の中でメールや電話だと時間がかかるという課題意識があったのでしょうか?
はい、お客様からはさまざまな課題感をお聞きしていました。「今どきメールや電話はどうなのか」という意見は、お客様内部でも挙がっていたようです。
セキュリティに対する意識の高まりからセキュリティインシデントを管理する組織が立ち上がったのですが、運用がメールや電話で行われていることに課題がありました。具体的には情報の可視性が低く、必要な情報を迅速に共有・確認できないことが大きな課題として挙げられていました。
都道府県としてDX推進に取り組む中で、こうした課題の解決が求められていたというのが、今回の案件につながった背景です。これらの課題を解決し、情報を見える化することで迅速な意思決定を可能にし、さらに蓄積されたデータを有効活用することを目的としてプロジェクトが立ち上がりました。
ーーセキュリティ関連の案件は昨今のトレンドなのですか?
そうですね、非常に関心が高まっていると思います。JSOLでは、製造業を中心にセキュリティ関連の案件が多くなっています。今回の案件と同様にセキュリティの管理を行うものや、脆弱性のチェックを行うためのソリューション導入などが多いです。
最近では「セキュリティ対策はできて当たり前」という認識が強まってきているため、公共機関から民間企業に至るまで、セキュリティ体制の整備に注力している組織が増えてきています。
ーーセキュリティ関連のシステム対応に取り組む企業・組織は、同様にメールや電話での運用が課題になっているケースが多いのでしょうか?
もちろんメールや電話で運用している企業もありますが、インシデントを管理するためにシステムを導入している企業も少なくありません。ただ、これまではセキュリティインシデント管理に特化したソリューションがなく、運用面で課題を感じているケースがありました。
ServiceNowでは、セキュリティインシデントに特化したサービスがあり、これが大きな強みになります。セキュリティインシデントは、発生後いかに迅速に対処できるかが非常に重要になってきます。ServiceNowはこういったインシデントのステータスをリアルタイムにシステムへ反映でき、管理を効率化することが可能です。
このような経緯で、セキュリティインシデントの管理を正確かつ効率的に行いたいお客様から、ServiceNowの導入についてご依頼を受けるケースが多くなっています。
ーーセキュリティ関連以外で取り組んでいる案件はありますか?
他には、子育て支援システムの構築に取り組んでいます。国の事業として、各自治体が運営する児童館の入退館管理やお悩み相談会の運営サポートが主な内容です。横浜市に導入したこのシステムについては、JSOLのニュースリリースや特設サイトにも掲載されているので、詳しくはそちらをご覧ください。
ニュースリリース:横浜市地域子育て支援拠点の次期システム構築に着手 | 株式会社JSOL
特設サイト:【J’sX採用事例】徹底した利便性の追求と支援拠点運営 スタッフの思いを汲んだシステム開発
また、国が推進する「ファミリー・サポート・センター事業」という、子どもを預ける・預かるサービスにも携わっています。忙しい子育て中の親御さんのために、近隣の方々が子どもを預かり、保育園や塾の送り迎えを代行するシステムで、預かり手と預けたい親御さんをマッチングする機能を提供することで、子育ての負担を軽減させるお手伝いをしています。
「子育て」というのはまさに今の時代のニーズですね。
おっしゃるとおり、少子化が進む中で子育て支援は国や自治体にとって重要な課題となっています。
少子化と高齢化対策に関連する事業は予算が確保されやすいことから、自治体の取り組みが非常に活発になっており、それに伴ってシステム化のニーズも高まっています。私たちJSOLは、この社会的な背景を受けてシステム導入によるサポートを行い、地域コミュニティーの強化と子育ての負担軽減に貢献していきたいと考えています。
ServiceNowの強みは人と人をつなぐ仕組みを「簡単に作れる」こと
ーー今お話いただいた子育て支援において、ServiceNowが優れている点はありますか?
人と人とのつながりをサポートする機能が充実している点が、ServiceNowの大きな特徴です。さきほどの都道府県でのセキュリティインシデントの報告や、横浜市での子育て支援施設の利用申請、子どもを預ける人と預かる人のマッチングなどは、すべて人と人の間をつなぐものです。
こういった連携はどのような業務にも必ずあり、人と人の間にServiceNowが入ることで、連携をスムーズにすることができます。
ServiceNowであれば、申請画面の作成やワークフローを回して承認するプロセスなど、人との連携を行う機能を簡単に作れるのです。そのため、さまざまな業務にServiceNowが導入されています。
ーーこの「簡単に作れる」という点が、ServiceNowが選ばれる理由の一つなのでしょうか?
そのとおりです。ServiceNowはローコードプラットフォームと呼ばれる、プログラミングをできるだけ行わずに、設定画面に設定を入れていくことでシステムを構築できるソリューションです。プログラミングの知識がなくても画面や裏側の処理を構築でき、短期間で高品質なシステムを作ることができます。
SalesforceやOutSystemsなど、他のローコードプラットフォームも存在しますが、その中でもServiceNowは「使いやすい」と評価されています。
ServiceNowの価格自体は少し高いと言われることがあるのですが、その分従来のプログラミングによる開発と比べると、開発コストを抑えることができます。
最大のメリットは開発期間を短縮できることです。ローコードで開発できる点に加えて、豊富な標準機能がすでに備わっていることで、開発期間を短縮しながら高機能なシステムを構築できます。
デジタル化がなかなか進まないお客様に対するJSOL流の柔軟なアプローチ
ーー紙で運用しているなど、デジタルに慣れていないお客様に対してシステムを導入する際に意識していることはありますか?
公共機関などではまだ紙ベースでの運用が残っており、デジタル化の途上にあるところが多いです。最近になって一人一台パソコンが配布され、デジタル化が徐々に進み始めたような場所もあります。このように、普段の業務でシステムを使っていないことから、デジタルやITに慣れていないお客様が多くいます。
私たちは、お客様の理解度に合わせて説明し、システム導入のプロセスを丁寧に進めることを心がけています。JSOLはシステム化に関する豊富な経験と知見を持っているため、提案型のアプローチでプロジェクトをリードし、主体的に進めるケースが多いです。
一方、民間企業ではお客様側に情報システム部があり、IT知識やプロジェクト運営の経験を持っているケースが多いです。このような場合は、双方の意見をすり合わせながらプロジェクトを進めるようにしています。
ーーお客様がITに慣れていないケースとIT知識が豊富なケース、どちらもそれぞれの難しさがありそうですね
実際には「ITに慣れていないお客様」と「IT知識が豊富なお客様」に綺麗に分かれるわけではなく、お客様の中でも担当者によって、ITの知識や経験にバラツキがあることもあります。
「プロジェクトは生き物」と言われるように、状況や関わる人々に応じて柔軟に対応する必要があると考えています。公共機関であれ民間企業であれ、その時々のニーズや課題に合わせて、最適なアプローチを模索していくことが大切です。
ServiceNowが得意とする「守りを固めるDX」とは?
ーーひとくちにDXといっても色々なパターンがあると思いますが、JSOLさんが得意とする領域があったりするのでしょうか?
DXにはさまざまな捉え方があるため、私たちJSOLでは、「攻めのDX」と「守りのDX」という2つに大別して考えるようにしています。
攻めのDXは、デジタル技術を駆使して新たなビジネスモデルを作り出すことを指します。一方で守りのDXは、既存の業務プロセスの非効率なところやリスクをデジタル技術で改善することに焦点を当てます。
先ほどもご説明したように、ServiceNowの場合は人と人とのつながりをスムーズにすることで、作業時間の削減や業務効率の向上を実現します。つまり「守りのDX」が、ServiceNowの得意とする領域です。
「守り」という呼び方ではありますが、決して取り組み自体が保守的なわけではありません。我々はITのプロとして、システムを導入することで効果をあげ、結果をお客様にしっかりとお伝えすることを心がけています。
ーー「守りのDX」を実現するうえで、心がけていることや気をつけていることはありますか?
まずよくある失敗例からお話しすると、今あるアナログな業務をそのままデジタルで再現するだけだと、一定の効果はあるが、実は本当の改善・効率化になっていないというケースが多いです。
そのためJSOLでは、現行の業務についてお客様にヒアリングをする際に、「この業務は不要ではないか」や「この業務とこの業務を一緒にやったら効率的ではないか」といった話まで踏み込むようにしています。我々はこれを「BPR」と呼んでいます。
業務を「再構築」することまで含めて対応することで、デジタル化による効率化だけでなく、業務がコンパクトになることで生産性向上の効果がより大きくなることを目指して提案をしています。
現場からの協力を得るには「効果を実感してもらう」ことが大切
ーー業務を再構築するとのことですが、業務を変えることに対してお客様の現場から抵抗があるケースもあるのでしょうか?
はい、現場の担当者から見れば、自分たちの業務プロセスを変えることへの抵抗感があるのは、自然な反応です。
このような場合、我々は実際にシステムを使用するユーザー側に立ったメリットを丁寧に説明することを心がけています。システム導入によって業務がどのように変化し、その結果どのような利点が生まれるのかを具体的に示すことで、現場の担当者が納得し、導入に向けて前向きになってもらえるように努めています。
重要なのはまず小さな改善から始めて、具体的な成果を実感してもらうことです。たとえ小規模でも、実際に業務が改善されたと感じてもらえれば、DXを行う意味を理解し受け入れてもらいやすくなります。
ーー現場の理解を得ることが大切なのですね。他にもDXを推進するうえでお客様に対して意識的に取り組んでいることはありますか?
DXを推進するためには業務の変革が必要となってくるため、現場の担当者のご協力が不可欠です。
しかしDXを進めるよう経営層から指示されたものの、具体的に何から手をつけていいか分からないという担当者が多いのが現状です。加えて、現場の担当者は日々の業務で忙しいため、新しい取り組みに関わる余裕がないことが多々あります。
こういった状況下でDXを推進するには、具体的な成果を早めに実感してもらうことが大切です。小さく始めて効果を実感してもらい、「確かにこれは良いね」と感じていただくことで、お客様の中でさらなる改善の意欲が湧き、積極的にご協力いただけるようになります。