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“顧客に役立つDX化”をしたいエンジニア・コンサルタントに贈る!真の課題を解決する5つの心得【前編】

講演記事前編

コロナ禍以降、急速にデジタル移行が進む昨今ですが、脱ハンコ・脱ペーパーレスがDX、というわけではありません。現状のアナログ業務ベースの仕事から脱却することはもちろん、ビジネス環境の激しい変化に対応し、データを活用して企業文化・風土を変革することが、DXの本質となります。

しかし、「いつかはやらなきゃいけないけれど、自社はまだそんなレベルではない」「直接利益に貢献する施策でなければ予算が付かない」など、DX化をなかなか推進できない顧客も多いのではないでしょうか。

本記事では、“顧客に役立つDX化”をしたいエンジニア・コンサルタントに向けて、DXを推進する5つの心得をお伝えしていきます。

1. 目の前の担当者の先にいる組織・顧客のメリットを見える化

目の前の担当者の先にいる組織・顧客のメリットを見える化


まず、DX推進部など直接コミュニケーションを取る顧客担当者のメリットだけでなく、その先にいる組織全体のメリットを見える化する必要があります。顧客担当者が抱えているミッションや課題感だけを見ていると、後から他部署の課題や経営層の課題を解決できていない可能性があるからです。

その場合、システム構築の途中で経営層から思わぬ要望が入ったり、構築後に上手く組織全体で機能しなかったりすることもあります。

組織全体にメリットになるシステムとは何か、また顧客の先にいる顧客、カスタマーにとってメリットになることは何かを把握することが重要です。

例えば、営業部のアナログ業務をシステム導入で効率化することにより、既存顧客への新規提案が可能になったり、新規顧客開拓のための戦略を立案する時間を創出できたりする可能性があります。そのためには、データを格納するだけでなく、顧客への提案に活かしやすいデータ加工を行えるようなシステムが求められます。

2. 投資に対する費用対効果を定量で示す

投資に対する費用対効果を定量で示す

システム導入を最終判断するのは経営層であり、費用対効果を求められます。数値化は目の前の顧客担当者を納得させるだけでなく、担当者が社内で上司や経営層に説明する際にも、非常に重要なのです。

例えば顧客の業務を分解し、それぞれの所要時間目安を割り出します。上記の図の時間がかかる場合、仮に月間1000件の依頼があれば総工数は183時間、コストは13.8M円です。(人月原価100万円、人月160時間換算)

これをシステムにより自動化した場合、1件あたりの所要時間は11分から7分に短縮できます。たった3分の短縮ですが、1000件積み上がると500万円のコスト削減に繋がります。

このように、費用対効果を具体的に示すことで、現場業務の変化を体感しにくい経営層にもDX推進の重要性を理解してもらえるでしょう。

3. まずは一部門から。全社横断を意識しながら小さく始める

DXは営業から経理まで部署を横断したデータ一元化や、カスタマーサービスで得たデータを営業・企画部が活用するなど、部門を跨ぐテーマが多い傾向にあります。

しかし、各部門の裁量は基本的に自部門の範囲のみであり、各部門の担当者とこれらのテーマを議論・意思決定することは難しいでしょう。

DX推進は、全社部門のDX推進担当者や情報システム部門が担当するケースが多く、各部門との調整を強いられた結果、なかなかシステムの要件定義が定まらない、システム導入が遅れていくといったケースも少なくありません。

また、各現場の業務を理解しきれない・吸い上げきれないことは、導入後に現場から不満があがる、システム運用が浸透しないといった失敗例に繋がる要因となります。

そこで、システム導入はまずは一部門での導入というスモールスタートで始めるのがおすすめです。一部門の導入で得たノウハウを別の部門に展開し、徐々にDX化を広めていく方が結果的に導入が早く、また浸透もしやすいのです。

ただし、一部門特有の課題に合わせて全社横断しにくくならないよう、次章で紹介する「fit to standard」の考え方を持って導入を進めるようにしましょう。

4. 「デジタルファースト」デジタルに合わせて業務を変革する

DX化において、顧客は現在のアナログ業務にいかにデジタルシステムを当てはめるかという視点で考え、業務に合わせてカスタマイズ化したシステム構築を要望されがちです。

しかし、最終的にDX化を成功させるために推奨したいのは、システムの標準の考え方に合わせて業務を再構築する、いわゆる「fit to standard」という考え方です。


なぜなら、業務に合わせてシステムを作った後に業務の変更があった場合、システムを変えなければいけなくなるため再度コストがかかります。さらに、システムを無理に業務に合わせようとすると、不整合が起き、結果的に使いにくいシステムが出来あがってしまうのです。

例えばこれまでは出社を前提とした業務が当たり前でしたが、コロナ禍によってリモートによる業務変革を強いられました。今後も時代の変化や顧客の価値観の多様化、従業員の働き方の変化によって、業務を変化していかなければいけません。

これまでのアナログを前提とした業務ではなく、デジタルでできることをベースに業務を再構築する。そうすることで、顧客や市場の変化に合わせてシステムをアップデートし続けることができます。

「fit to standard」に基づいたシステム開発を行うためには、現場業務の深い理解と現実的な業務変革が求められます。だからこそ、前述した一部門でのスモールスタートが最適なのです。

5. 評価基準をあらかじめ明確にした上でPoCを実行する

システム導入前、PoCを行うケースが多いかと思います。営業としては「とりあえずPoCをやって体感してみませんか」と提案しがちですが、目的や評価基準が明確でないと、「なんとなく効果が実感できなかった」という結果に繋がりかねません。

そのため、何ができたら導入を進めるのか、評価を行うための基準・指標と、期限を握ってからPoCに入るようにしましょう。基準を満たした結果が得られれば自動的に導入に進むという、背中を押すツールになり得ます。

費用対効果を数値で示すことも合わせて、目の前の担当者が上申しやすい材料を用意するよう意識します。また、単なるベンダー企業という枠を超え、デジタル技術を活用して新ビジネス・サービスの提供し、社会への新たな価値提供を行うことが、我々エンジニア・コンサルタントに今求められていることではないでしょうか。

顧客に本当に役立つDXを推進するための、5つの心得を解説していきました。後編では、「目の前の担当者の先にいる組織・顧客のメリットを見える化」「「デジタルファースト」デジタルに合わせて業務を変革する」の2つのポイントを元にクラウドのプラットフォームServiceNowを活用してDX化を実現した事例をご紹介していきます。