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“顧客に役立つDX化”をしたいエンジニア・コンサルタントに贈る!真の課題を解決する5つの心得【後編】

講演記事後編

 

前編では、顧客のDX化を進める上で重要な5つのポイントをご紹介しました。後編では、前編でご紹介した「目の前の担当者の先にいる組織・顧客のメリットを見える化」「「デジタルファースト」デジタルに合わせて業務を変革する」の2つのポイントをもとに、ServiceNowを活用してDX化を実現した事例をご紹介していきます。

前編はこちら

1. 事例①:不動産賃貸業による部門横断業務改善

顧客にとって本当に役立つDX化を実現するためには、直接コミュニケーションを取る顧客担当者のメリットだけでなく、その先にいる組織全体のメリットを見える化する必要があります。ここでは不動産賃貸業による部門横断業務改善の案件を事例としてご紹介します。

1-1. 課題:各部署の連携が取れておらず、連携ミスが発生

課題:各部署の連携が取れておらず、連携ミスが発生

不動産賃貸業の主な業務の流れは、営業活動・物件オーナーとの契約・施工会社とのコンペ・施工会社との契約・物件オーナーへの状況報告・物件オーナーとの請求となっています。

物件のオーナーや施工会社と対峙するのは、営業・営業事務・施工管理と複数部署です。担当者間の連携はメールなどを中心に行われますが、施工会社への見積もり依頼はアナログ対応であったり、進捗が可視化しにくかったり、連携漏れによるミスが起こり得る状況です。

1-2. 施策:各部門の課題と解決策を明確にし、部門横断でDX化を実現

施策:各部門の課題と解決策を明確にし、部門横断でDX化を実現


ServiceNowを活用し、施工業者・オーナーなど外部とのコミュニケーションを取る外部ポータルと、社内での情報管理・契約管理を行う内部ポータルを構築しました。

外部ポータルでは、施工会社への見積もり依頼・発注・納期回答をシステム内で実施できるようにし、発注情報は履歴に残るようにしています。オーナーはシステム内でいつでも施工状況を照会でき、完了連絡も漏れなく受け取ることが可能です。

内部ポータルでは、営業担当者がターゲットリストの獲得から成約・失注登録まで行い、成約後は営業事務に自動連携されます。契約書が自動提案されるため、案件ごとに異なる契約種別もスムーズに作成可能です。契約後は施工管理に自動連携され、発注・納期管理もシステム内で行えます。

1-3. 効果:部門間の連携スピードがUPし、顧客満足度が向上

各部署の課題をそれぞれ解決するのではなく、ServiceNowを活用したシステムで外部・内部ポータルを一元管理することで、情報の漏れを防ぎ、各担当者への連携を自動で実施できるようにしました。

それによって各部署の業務精度の向上、部門間の連携スピードの向上、作業の効率化が実現します。組織と顧客の全体の業務の流れを理解し、総合的なDX化を行った結果、顧客満足度の向上や業績の向上にも貢献することができたDX化の成功事例です。

2. 事例②:「デジタルファースト」による行政における問い合わせ相談対応の業務改善

現在のアナログ業務にデジタルシステムを当てはめるのではなく、デジタルに合わせて業務を変革する「デジタルファースト」の考えも、DX化においては非常に重要なポイントです。ここでは、行政における問い合わせ相談対応の業務改善を例にご説明していきます。

2-1. 課題:住民からの相談を紙資料で記録・管理。相談内容の分析や連携がしにくい

住民から行政の相談窓口やオンライン窓口などに寄せられた問い合わせや相談は、紙資料で記録・管理されていました。

職員が類似した過去の相談を参考にするためには、膨大な紙資料の中から探す必要があります。そのため、職員の経験値によって回答内容が異なり、職員のスキル向上にも課題がありました。また、監督者はどういった問い合わせが多いのか、住民のニーズや傾向を把握しにくい状況にありました。

2-2. 施策:ServiceNowを活用して担当者のアサインや相談内容の連携を実施

施策:ServiceNowを活用して担当者のアサインや相談内容の連携を実施


相談者がチャットボットで問い合わせをしたのち、職員がすぐにそれを確認するのではなく、ServiceNowにて構築システムにて案件を作成します。担当者のアサインを自動で行い、それに基づいて職員は対応するよう、業務の流れを変更しました。

職員はシステム内に蓄積した過去類似案件の内容を確認したり、連携アプリを通して監督者との相談を行ったりすることができます。

2-3. 効果:回答の質向上、状況確認や改善アクションの実現

相談内容が1つのシステムに蓄積されていくため、相談窓口の職員は過去の類似案件をすぐに検索し、それを参考に回答することができます。自身が経験したことのない案件でも質の高い回答をすることができ、職員のスキルアップが、結果的に利用者(住民)の満足度向上に繋がります。

監督者は常にシステムで状況確認ができ、最新の進捗を把握できます。直近で多い相談内容を元に、新たな施策を考案することも可能です。

職員は会話ログのアップロードなどシステムによる業務変更が発生しますが、結果的にそれが情報の蓄積、職員の回答の質向上に役立ちます。時にはデジタルに合わせて業務の変革を行うことが、業務の質向上・効率化・顧客満足度向上に繋がる「真のDX化」を生み出すのです。

3. まとめ

前編・後編に渡って、顧客に役立つDXを推進する5つの心得をご紹介してきました。

世の中のデジタル化は着実に進行していますが、ICTに関わる課題はいきなり変わりません。顧客とは、相手の認識レベルやリテラシーに沿った内容で会話をすること、評論家にならず圧倒的な当事者意識を持つこと、無理な背伸びはせずに自分の言葉で語ることがポイントです。

また心得の中でもご紹介した定量の数字など、客観的な視点を盛り込むことで、顧客が納得しやすい提案となります。

前編・後編の内容を踏まえて、DXツールの導入だけで満足するのではなく、顧客の真の課題を解決し、DX化を実現していきましょう。