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【前編】DXツールの導入はゴールではなくスタート!ツール導入後に絶対にやるべきこと

お客様が求めるのは市場のニーズを早く集めること。そのためにはツールの導入と継続的な改善が必要

ーー最近、お客様からのご依頼に特別な傾向はありますか?時代の変化やDXの影響などがあれば教えてください。

CRMやCMSなどのツールを導入するというケースはよく耳にしますが、このようなツールの需要の奥には、市場のニーズを速やかに集めるにはどうすれば良いかということが大きな関心事となっていると感じています。DX化が進む中で、お客様が、さらに先のお客様に対してアプローチをすることをいかに高速化していくかが、非常に求められている状況ですね。

世の中のニーズが多様化しており、変化のスピードも速くなっていることで、お客様の需要に対していち早く対応することが求められているのだと思います。

ーー業務プロセス改革のためのツール導入プロセスにおいて、よくある失敗事例があれば教えていただけますか?

ツールの導入やシステムの開発がゴールになってしまうことが、ありがちなケースだと思います。まずはツールの導入を成功させて、しっかりと業務を回せるようにならなければ話にならないので、開発をしている段階では一時的にツールの導入を目標として開発に集中することもあります。これ自体は仕方ないことですが、ツールの導入はあくまでスタートに過ぎないため、導入だけで終わってしまってはいけません。DX基盤を維持し、継続的に効果を得ていくことが本来の目的です。

これを忘れないようにすることを、お客様へ定期的にお伝えし、継続的な改善へとつなげていくことが重要ですね。

担当者だけではなく、意思決定者を巻き込んでプロジェクトを進めることも大切です。基本的にはシステム担当やDX推進担当など、プロジェクトの窓口となる担当者と会話をすることがメインにはなりますが、担当者だけではうまく会社全体をうまくコントロールすることは難しいです。そのため経営層を巻き込み、経営層に対してもプロジェクトの重要性を訴求し続ける必要があります。

売上が順調な会社はツール導入後のDX推進に消極的?大事なのは導入効果を見える化すること

ーー 経営層を巻き込むとのことですが、経営者の方が「システムを導入したら終わり」と考えてしまう場合もありますか?

はい、そのような見方をされる経営者の方は実際にいらっしゃいます。なぜそうなるかというと、DXによる業務プロセス改革は成果を数値で示しにくいというのが大きな理由です。単純な業務の効率化であれば、効率化によって生まれたコスト削減や生産性向上などの効果を数値で表しやすいですが、DXの場合はもっと広範囲にわたる根本的な改革を行うので、数値で表せない部分が多くなります。

そのため特に売上や利益が順調な企業では、経営層の方がDXの推進に対する必要性を感じないことがあります。経営層が現状に満足している場合、新たな投資や改革には消極的になりがちですので。

実際にはツールの導入は始まりに過ぎず、十分な効果を得るには活用し続けながら継続的に改善していく必要があります。DXにおいて最も大事なのは、導入後の運用を通じて具体的なビジネスの価値を創出し続けることです。そのためには経営層に対して、ツールを導入しただけでは大きな効果は得られないということを啓蒙し続けていかないといけません。

具体的には、ツールを導入したあとの効果を、何らかの形で見える化して伝えていくことが非常に重要です。このような形で、DXがただの一時的な投資ではなく長期的なビジネス戦略の一環であるという認識を経営層に持っていただくということを、意識して取り組んでいます。

ーー効果を見える化するというのは定量的に評価していくのでしょうか?それとも定性的な評価も両方を見るべきなのでしょうか?

効果を定量的、つまり数値で表現できればそれが理想です。業務にかかる時間が何時間減ったとか、かかっていたコストを何%削減できたとか。ですがすべての効果が数値化できるわけではありません。実際には、定性的な側面も大きな意味を持ちます。

例えば、DXを推進していく中で、従業員のモチベーションの向上や顧客満足度の改善といった、数値では捉えられないようなポジティブな変化があるかもしれません。これらは直接的な収益向上に結びつかないかもしれませんが、長期的には会社の成長に不可欠な要素です。そのため効果を振り返る際には、定量的なデータだけでなく、定性的な観点でも効果を評価することが重要だと考えています。

定量・定性の双方の観点で効果測定を行う

ーー現在導入段階のお客様に対しても、今お聞きした「効果を見える化していく」という話をすでにされているのでしょうか?

はい、そうですね。まず現在対応中の案件について簡単に状況をお伝えすると、実際に業務を行う「現場担当者」の方と、社内のデジタル推進を行うために各部門を横串で管轄する「デジタル統括本部」、キーマンとなる「情報部門の責任者」の3者が主な関係者となります。基本的には現場担当者とデジタル統括本部に対してコミュニケーションを取りながら、定期的に情報部門の責任者へ報告を行うような形でプロジェクトを進めています。

難しいのは、関係者ごとにそれぞれの立場からの目線で考えるため、意見が合わないケースがあることです。例えば現場担当者の立場だと、実際に業務を回すのは現場担当者なので、他の人から余計なことを言われて仕事を増やしたくないというのが本音かもしれません。しかし現場の目線だけだとどうしても近視眼的になってしまうため、複数の関係者の意見を聞いて総合的に判断していく必要があります。業務を知っているのは現場担当者なので、現場担当者の意見は非常に重要ですが、DX化の効果を継続的に得ていくためには、部門をまたがった目線や経営的な目線での意見も必要です。

そのため我々JSOLとしては、それぞれの関係者の立場をできる限り尊重し、みなさんの顔を立てながら進めるように心掛けています。

現場主導のDXは失敗する?経営層を巻き込んだトップダウンでの推進が重要

ーー現場目線だと近視眼的になるとのことですが、例えばどのような問題が起きるのでしょうか?

現場担当者の目線になると、システムの導入を成功させることがミッションとなってしまいます。これ自体は立場上仕方がないことなのですが、現場担当者が主導でプロジェクトを進めた場合はシステム導入がゴールとなり、その先にある本来の目的を見失いがちです。

「何のためにシステムを導入するのか」というのが最初にあって、そのために予算を投じるべきなのか、それともスモールスタートで始めるのかなどを判断するというのが非常に重要です。さきほどもお話したように、費用対効果ありきではなかなかDXは進まないので、スモールスタートで進めるという選択肢を持つ必要があると思います。

JSOLとしては、お客様の会社の状況や経営層の意向を理解したうえで適切なアプローチをすることを心がけています。そのためにはやはり経営層、意思決定者と話をすることが重要ですね。

DXは単なる業務の効率化ではなくて、組織の再編なども含めて会社全体で行うものなので、現場からのボトムアップではなかなか難しく、経営層からのトップダウンで進めていくのが最も成功しやすいルートになります。ですので経営層の方を巻き込み、熱量を持った意思決定者を作ることが、DXを成功させる鍵になると考えています。