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【前編】業務の効率化だけではない?ServiceNow導入の費用に表れないメリットとは

お客様が抱える業務課題に多いのは手作業と紙の作業

ーー真田さんは製薬業界のお客様のご担当経験が豊富と伺いました。製薬業界ではお客様からどのような要望を受けることが多いのでしょうか?

手作業で行っている業務の自動化や紙で行っている運用の電子化をしたいというご要望が非常に多いです。

製薬業界では病院や大学との関係を持つことが多く、癒着が起こらないようにするために「透明性ガイドライン」が定められています。例えば寄付をしたり講演会を開催したりする際に、見返りとして便宜をはかってもらうようなことがあってはいけません。不正を防ぐためには寄付や講演会などの活動に関する記録を細かく残す必要があり、今までは紙ベースで管理されてきました。

しかし紙での管理は保管や検索の手間が大きく、記録の紛失リスクも伴います。情報公開の許可を得るためには、わざわざお医者様のところへ伺って直接印鑑をもらうなど、非効率な方法が一般的でした。

そこで紙の保管と承認プロセスの手間を解消するため、オンラインでの承認プロセスを実現しました。これにより記録の透明性が向上し、承認の手間や管理の煩雑さが解消されます。

ーーシステムの導入を進めている最中に課題が起きたり、お客様から要望を受けたりすることはありましたか?

導入を進めていく過程で、お客様からお聞きする要望として特に多かったのが、MR(病院や薬局などに自社の医薬品を採用してもらう役割)の方々が「営業活動にもっと集中できるようにしたい」といったご依頼です。経費精算や日報などの庶務的な作業にかかる時間を減らし、本来の業務である医療機関への情報提供に専念させたいと考えていらっしゃいました。入力する項目を一つでも減らすなど、少しでも手作業を減らすために細部までこだわりたいというのが、お客様からのオーダーです。

すべての手作業をなくすことは難しいかもしれませんが、できる限りの効率化を行い、お客様のご要望に応えるよう努めました。具体的には、MRの方が経費精算を行う際にできるだけ情報を自動で連携して、少しでも手入力を減らす対応を行いました。

電子化にあたってお客様が感じたセキュリティ面の不安を柔軟に解決

電子化にあたってお客様が感じたセキュリティ面の不安を柔軟に解決

ーー業務の電子化を進めることによってお客様が不安に感じることはありましたか?

電子化を進めるうえで、お客様からはセキュリティに関する不安の声をいただくことがありました。特に、お医者様が外部からお客様のシステムにアクセスすることに対する懸念が大きかったです。

このお客様はServiceNowを利用して他の仕組みも構築していたため、第三者が外部からのアクセスを許すことで、ServiceNowのシステム全体のセキュリティリスクが高まることを心配されていました。システムをグローバルに展開されているということもあり、セキュリティに対する意識が非常に高く、セキュリティリスクを極力下げながら業務を効率化しないといけないというのは、なかなか難しかったです。

不安を解消するための解決策として、ServiceNowに直接ログインせずに、電子承認を行える別のソリューションを組み合わせることで対策しました。これにより、セキュリティを確保しつつ、電子承認のプロセスをスムーズに進めることができました。

散在しがちな情報を自動で整理!ServiceNow導入の数字に表れないメリット

ーーServiceNowを導入するうえで費用対効果を試算することがあると思いますが、どのように算出されていましたか?

ServiceNow導入の費用対効果を算出する一番オーソドックスな方法は、人件費の削減効果を試算するやり方です。ServiceNowを導入することで「これだけ工数が減る」という予測を立てて、削減できる工数に単価をかけることで人件費の削減額を算出します。算出結果を導入費用と比較して、「何年で元を取れるか」といった投資回収期間を計算することができます。

費用対効果の試算は、お客様自身が行うこともあれば、私たちJSOLがサポートすることもあります。

注意しないといけないのが、ServiceNowを導入するメリットは人件費の削減だけではなく、費用に直接表れない効果があることです。試算した費用対効果に加えて費用に表れないメリットを含めて提案し、お客様の社内での稟議を通す際の材料としています。

ーーServiceNowの導入による費用に表れないメリットとは、具体的にどのようなものがあったのでしょうか?

ServiceNowを導入することで得られた費用に表れないメリットの一つが、履歴が残ることです。案件ごとのチャット機能があるため、後からでも経緯を簡単に追うことができます。チャットでのコミュニケーションが当たり前になったことで、複数のコミュニケーションツールに情報が散在しているケースも多いのではないでしょうか。ServiceNowなら必要な情報がどこにあるのか分からなくなることを防げるため、情報を探すのに無駄に時間をかけなくてよくなったという声をよく耳にします。

また、担当者以外が顧客とのやり取りを確認したい時や社内で情報を明示する必要に迫られた時も、ServiceNowを見れば一目で分かるようになります。以前は何万枚もの紙で管理していたので情報を探すのが大変でしたが、電子化によってこういった悩みが解消されました。

他には経費の使用に関しても、各部署の承認者が承認することで初めて支払いが許可されるようシステム化したことで、コンプライアンスが守られるようになったという効果もあります。

これらは費用削減効果として数字には表れないかもしれませんが、担当者の負担軽減やコンプライアンスの強化という形で、お客様がメリットを実感されているものです。

ーー費用対効果を算出した結果、お客様の社内稟議が通らないケースもあるかと思います。費用面でお客様と合意するためのポイントはありますか?

前提から説明すると、ServiceNowを導入する際には、ServiceNowの標準機能を利用するパターンと、開発基盤を使ってお客様の業務に合わせて開発するパターンの2つがあります。費用が大きくなるのは後者のパターンです。お客様の業務に合わせて一から開発するため、システム化する範囲の広さや業務の複雑さ、システム化の難易度によって、費用が大きく膨らむことがあります。

標準機能を利用する場合は、基本的に設定のみで導入が可能ですから、費用を抑えつつ導入可能です。初期費用が比較的安価になるため、導入後に業務に合わないと感じた場合に、途中で利用をやめても費用面のマイナスを最小限に抑えられます。試しに使ってみて合わなかったらやめるという選択肢が取れるので、導入の判断をしやすくなる点は大きなメリットです。

私たちは、最初に標準機能を利用するパターンをおすすめするようにしています。システムをお客様の業務に合わせるのではなく、ServiceNowの標準機能に業務を合わせることで、導入のリスクを最小限に抑えるという考え方です。