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【後編】「小さく入れて大きく育てる」失敗しないDX導入の極意

前編はこちら

ServiceNowの導入を成功に導くためのポイントは「お客様とのイメージの共有」

ーーServiceNowの標準機能の利用を推奨する際、お客様にはどのように説明をしていますか?

ServiceNowを導入する際、お客様にServiceNowで実現できることを詳しく説明するところから始めます。そのうえで、ServiceNowの標準機能を最大限に活用することをおすすめしています。

お客様の既存の業務プロセスにシステムを完全に合わせることが理想的かもしれませんが、開発基盤を使って開発していくことには費用が膨らむリスクや、品質が安定しないリスクが伴います。標準機能を利用するメリットと、業務に合わせてシステムを開発する際のリスクを丁寧に説明し、お客様に納得していただくよう努めています。

また、開発基盤を使って開発する場合でも、ServiceNowの標準機能を使用することで、開発工数を削減して費用やリスクを抑えることが可能です。ServiceNowは年に一度のバージョンアップが行われるのですが、独自に開発した部分が多いと、バージョンアップの影響を受けやすくなります。標準機能の動作が変わることで、連携している箇所に不具合が起こる可能性がありますし、このような不具合が起きないかを検証するためにも工数がかかります。

標準機能を利用することで、バージョンアップ時の影響を最小限に抑えることができ、長期的な運用コストの削減やシステムの安定性を保てるというメリットがあるのです。

このように、ServiceNowの標準機能を利用することのメリットをお客様に理解していただき、可能な限り標準機能に合わせて業務プロセスを調整していただくようお願いしています。標準機能を最大限活用できれば、費用対効果が高く品質の安定したシステム導入が行えるので、お客様にとっても我々JSOLにとってもお互いにとってよいことだと考えています。

ーーServiceNowの標準機能を活用できるか判断していく中で、標準機能で対応しやすい要望のパターンはありますか?

お客様のご要望はさまざまで、前提条件によっても変わってきます。

ServiceNowの標準機能を活用する際、お客様からのさまざまな要望に対してどのように対応できるかは、一つ一つの要望を精査して判断しています。精査した結果、お客様にとって本当に価値を提供できる場合には、ServiceNowの開発基盤を使ってカスタマイズを行うべきだと考えます。

標準機能を利用する場合には、「標準機能であればここまでのことができます」「この機能を使うと、このような動きになります」といった具体的な説明をすることがとても大事です。ServiceNowはノーコード・ローコードのツールですので、デモをするための機能を簡単に作れます。実際のシステムの動きをお見せすることで、どのような機能があり、どのように業務に役立つかをお客様が直感的に理解しやすくなります。

資料での説明も必要ですが、実際にシステムが動作する様子を見ていただくことで、お客様により具体的なイメージを持っていただくことが非常に大切です。そのため、可能な限りデモを作成し、お客様に実際の動きを見ていただくようにしています。ServiceNowのノーコード・ローコードツールという特性を活かして、お客様がServiceNowの標準機能を最大限に活用できるようにサポートしています。

【失敗事例】いきなり全部をやろうとすると失敗しやすい?成功の鍵は「小さく入れて大きく育てる」こと

ーーServiceNowの標準機能を活用することのメリットがよく分かりました。一方でお客様によっては標準機能に業務を合わせていただけないケースもあるのでしょうか?

ServiceNowの標準機能を活用するメリットを説明したうえで、お客様によっては標準機能に業務を合わせるのが難しいケースもありますね。お客様が「やりたいことを全部実現したい」という気持ちが強い場合、標準機能の範囲を超える要望が出てくることがあります。そのような場合は、標準機能で実現できる範囲と、標準の範囲外の要望を実現するための追加のコストについて、しっかりとご説明します。

お客様がシステムに対する具体的なイメージを持ちにくいことが、JSOL側とお客様の間で考えのギャップが生まれる一因になっていると考えています。お客様とのイメージの相違は、ServiceNowの導入を進めるうえで課題として感じやすい部分です。

JSOLとしては、標準機能の範囲内で最大限の価値を提供することを目指しつつ、標準機能でまかなえない要望に対しては追加のコストをご了承いただいたうえで対応することになります。このように、お客様に合わせて柔軟な対応を行い、お客様のニーズに合った最適なソリューションを提供するよう心がけています。

ーー最初から開発基盤を使ってシステムを作り込んだ結果、うまくいかなかった事例はありますか?

最初から開発基盤を使ってシステムを大規模に作り込んだものの、後になって「実際に使ってみると、ユーザーにとっては必要のない機能だった」というケースは結構あります。初期段階で現場のニーズの見極めが難しいことや、お客様がシステムに対する具体的なイメージを持ちづらいことによって起こりがちな問題です。

そういった経験から、私たちJSOLとしては「小さく始めて、使いながら必要な機能を追加していく」という進め方を推奨しています。リスクを抑えつつ、ユーザーにとって本当に必要な機能を効率的にシステムに組み込んでいける方法です。

もちろん、業務にとって非常に重要な機能に関しては、初期段階でしっかりと組み込む必要があります。それ以外の機能については、実際にシステムを使い始めてからユーザーのフィードバックをもとに順次追加していく方が、より効果的であると考えています。

私たちはこの考え方をよく「小さく入れて大きく育てる」という言い方で表現しています。

ーー「小さく入れて大きく育てる」のではなく、最初から大きく作り込みたいと考えるお客様に特徴はあるのでしょうか?

最初から大きくシステムを作り込みたいと考えるお客様には、他の現場の意見が気になるという傾向がありますね。「機能が足りない」と、現場から納得してもらえないという懸念があるようです。

最初からやりたいことを全部やりたいと考えるお客様には、スケジュールや予算の兼ね合いで「ここまでしかできません」とご説明したり、「この機能は本当に初期段階で必要ですか?」といった議論を重ねたりします。

他には、小さく始めてシステムを徐々に育てていくメリットを、他社の成功事例を交えてお客様に説明することもあります。

ーーJSOL様の場合は豊富な事例をお持ちであることが、お客様からご納得いただけることに繋がっているのでしょうか?

はい、その通りだと思います。私たちJSOLでは、これまでの豊富な導入事例をお客様にご紹介することで、より具体的なイメージを持っていただき、納得していただけるケースが多いです。似た業界や業務での成功事例をお見せすることで、「自社でも同じような成果が期待できるのではないか」と感じていただけるようになります。

事例を積極的に説明することで、お客様がシステム導入のメリットをより具体的に理解し、しっかりと納得してプロジェクトを進めていただけるよう心がけています。

【成功事例】システムのユーザーはお客様だけではない!システム導入を円滑に進めるためにはサプライヤーへの細かな配慮も必要

ーーここまでお話いただいた製薬業界の事例以外に、DX・業務プロセス改革の成功事例として印象に残っている案件はありますか?

化学品メーカーのお客様に対して原料発注業務の電子化を行った案件が特に印象に残っています。そのお客様は、これまでFAXを使って業務のやり取りを行っていました。しかし、コロナウイルスの影響でテレワークを導入したにも関わらず、FAXを使った業務があるために出社しなければならないという状況に直面していました。

この問題を解決するために、FAXでのやり取りを電子化することで、完全なテレワークを可能にしました。電子化によってお客様は出社とテレワークを自由に選択できるようになり、業務の効率化だけでなく従業員の働き方の柔軟性も大きく向上しました。DXや業務プロセス改革の必要性と、実際の効果を実感できた案件です。

ーーこの案件では、業務プロセスの電子化を進めるうえで課題に感じるものはありましたか?

原料発注業務の電子化を進めるうえで、サプライヤーの方々にもシステムを使っていただく必要がありました。そのため、サプライヤーの方々にシステムを納得して使っていただくことが、プロジェクトを進めるうえでの大きなポイントとなりました。紙ベースでの作業に慣れているサプライヤーの方からは、「紙で書いた方が楽だ」という声もあり、こうした方々に対してしっかりと説明し、納得していただく必要がありました。

通常サプライヤーへの説明はお客様自身が行う作業ですが、細かい部分を説明するのが難しいという場合もあります。そのような時には、JSOLから直接サプライヤーへ説明を行うなど、柔軟に対応しました。状況に応じた細かいサポートが、お客様にとって心強いものだったのではないかと考えています。

ーーサプライヤーへのサポート以外に、紙での業務を電子化するにあたって心がけたことはありますか?

電子化を進める際には、システムの使いやすさに注力しました。特にサプライヤーが直接触れる部分に関しては、シンプルで直感的な操作性を心がけ、誰もが簡単に使えるように配慮しています。また、システムの利用方法を分かりやすく説明するマニュアルの作成にも力を入れ、ユーザーが迷うことなく操作できるようにしました。

実際にサプライヤーやお客様からシステムを利用した感想を直接お聞きする機会はなかったのですが、お客様が希望していたテレワークの実施を実現できていることから、お客様からご満足いただけていると考えています。

DXの効果を最大化するには導入後の改善が重要!JSOLは長期にわたってお客様の業務改善をサポート

ーーDXの効果を得るためには導入後の改善が重要だとお聞きすることがありますが、真田さんはどのように改善するのがよいと考えますか?

DXの効果を最大限に引き出すために、導入後の継続的な改善が重要だというのはその通りだと思います。最初からすべてを完璧に実現するのは難しいため、まずはお客様からの要望を優先順位付けし、段階的に対応していくことが大切です。また、私たちからも改善提案を積極的に行い、お客様と一緒にシステムをよりよいものにしていくことを心がけています。

JSOLではシステムを導入する際に「システムを入れて終わり」とは考えず、導入後の保守を含めた長期的な関係を大切にしています。導入後もお客様と密接に連携を取りながら、システムの利用状況を見守り、必要に応じて改善を加えていきます。

導入後に蓄積されるデータを分析し、データから見える新たな課題や改善点を見つけ出すことが、さらなる効果を得るためのポイントだと考えています。お客様に寄り添いながら長期的な目線で改善を行いビジネスに価値をもたらすことが、私たちの目指すところです。

ーーデータを分析して改善に活かすために、何か工夫していることはあるのでしょうか?

データを分析して改善に活かすためには、システム導入によって新たに蓄積されるデータをしっかりと管理し、分析できる体制を整えることが大切です。ServiceNowのようなシステムでは、業務プロセスがデジタル化されることで、これまで手に入らなかった多くのデータが得られるようになります。これらのデータを活用することで、業務のボトルネックや改善点を客観的に把握し、より効果的な改善策を打ち出すことが可能になります。

実際にデータを分析し改善に活かすには、ある程度のデータが蓄積されるのを待つ必要があります。一般的には、1年程度データが蓄積した頃から、有意義な分析が可能になるケースが多いです。

JSOLがServiceNowを導入したお客様には最近導入したばかりのところも多いため、現時点ではデータを十分に活用した事例はなく、これからデータを活かした改善を進めていく段階にあります。

ーーこれからDX化がさらに盛んになっていくと思いますが、真田さんはどのような変化を予想されていますか?

DXがさらに進展していく中で、特定の業務の効率化だけではなく、より広範囲での業務改善が可能になると考えています。異なる業務やシステム間の連携を深めることで、全体としての効率性や機能性が大きく向上するはずです。これまでも単純なシステム連携は行っていましたが、多様なシステムと連携するための機能(API)が発達することで、より高度な連携が可能になると思います。

また、データを活用した改善が一層進むことも予想されます。蓄積されたデータを分析して新たな気づきを得ることで、業務プロセスの最適化や新たな価値創出が加速すると思います。ただし、お客様によってデータからアイデアを得るための観点を持っている方もいれば、データを活用するのが難しい方もいらっしゃいます。ですので、JSOLからもデータを活用した改善案を積極的にお客様へご提示していくことが大事になると考えています。

JSOLは、お客様に合わせた柔軟な対応やデータの分析、最新技術の活用などを通して長期的にサポートを行い、お客様のビジネスの成長を支えていきます。